■ 天系いたこ・傀儡原さやか ■
私の、58回目の人生は、やはり火葬場から始まった。
火葬場従業員のあいだでは有名人。彼女が近くにいるものは直ぐに死ぬ。それでいて脈絡もない人間のそばにいつもいる。
つまり、焼く前、故人の隣に。
彼女は幽霊を憑依させることができるタイプのいたこで、故人より先に亡くなった夫か妻を憑依させ、安らかに死ねるようにするというサービスをしている。
ただし、憑依中は自分の記憶が途切れるので、彼女が目覚めるのはいつも火葬場。
火葬場従業員の主人公は噂の彼女に近づく。目的は、一年前に亡くなった恋人を憑依してほしいから。
しかし彼女は断る。
死期の近い人間の依頼しか受けないのが信条だからだ。そうしなければ彼女は死ぬ。彼女の意識は乗っ取られて死ぬ。
■ D―EX M ■
「シイロ!その眼だ…お前も気付いてるんだろ?だましだまし生きてきた…シイロ、シイロシイロシイロシイロ!いいね、いい色だ。私が怖いか?憎いか?もっとごらん?私が死にたくなるように、濃く!」
死の色をした瞳。見た者を死に至らしめる呪われた目を持つ少年がいた。
本名は知らない。見た両親が死んだからだ。
捨てられ、シイロと恐れられて生きてきた少年だった。
そんなシイロを拾ったのは、ホロボネと呼ばれる男だった。身長は小さく、偏屈なシワが刻まれた、醜い男だった。着ている服だけは貴族のものだったが、シイロに対する境遇は、スラム街にいたときよりもひどかった。
男は、シイロを虐待した。
自分を憎むように憎むように。
そうだ、男は死にたかったのだ。だがシイロは男を見なかった。そうすることが唯一、男に勝つことだったからだ。