作品未満。

■ ため息混じりのノストラダムス ■

俺は詩人になる!と言ってキムラが持ってきたのはノストラダムスの本だった。 予言が有名すぎて、あいつの職業は予言者だとばかり思っていたが、キムラがいうには本職・詩人らしい。だが、キムラが詩人とは笑えてくるだろ。毎日キムラのへったくそなポエムを聞かされているうち、だんだん自分にもあれ位書けるような気がしてきた。

■ 田端仁志のマスターブック事件 ■

田端仁志「神がみな美しければ、神話は成立しないだろう…?」
MasterBOOKのパラドックス
神はすべての最も美しい証明が書かれている本を持っている
自分の意思で産まれてきたんじゃないから、自分の意思で死ぬんじゃない。(バーイ田端仁志)

マスターブックのパラドクスとは。 全世界の図書の中身全てをまとめた本がある。これをマスターブックと定義する。 さて、 「全世界の図書」とあるからには、当然「マスターブック」も本であるから、全世界の図書に属する。 つまり、 マスターブックの中に入っている全世界の図書、の中に、マスターブックそのものも入ってしまう。 マスターブックの中に全世界の図書とともにマスターブックも入っていて更にその中の全世界の図書を集めたものの中にもマスターブックが入っていて更に…… という無限モノのパラドックス。 (※出典元の本の名前は失念。そのうえパラドクスの中身もうろ覚え。 (※昔読んだこのパラドクスが原型なんだよというだけなので、良しとしてください。

主な登場人物。
「新居千(あらおり・ちとせ)」 語り手の主人公。東南東大学工学部情報工学科2年。 教授と先輩から名前の別読みでニールセン(新ニイ/居イル/千セン)と呼ばれている。 ある土曜、自宅で料理しているところに変な男が乱入してくる。田端仁志と名乗ったその男により、 事件に巻き込まれ、とっておいたお菓子を食い荒らされたり肘ケガしたりと、散々な目にあう。 大学では基本ぼっちで、持っている携帯電話もプリペイド式のPHSという有様。大学内で彼と話したことのある人間は10人程度。 世話焼きの蛭間先輩と尊敬する教授以外の人間とは基本話さない。
「田端仁志(たばた・ひとし)」 自称神の末裔。東南東大学法学部法律学科2年。 マスターブックの現在の所有者。アカシック語を完璧に傍観でき、唯一ネイティブに使用できる人間。 ある勢力から逃げ回っており、なぜかは知らないがニールセンの部屋に匿ってもらう (本人曰く「行方をくらますためには、どのカテゴリにも属していない人間との新しいコネクションが必要だった」らしい。) 黒ぶちの、フレームが太い四角い眼鏡をかけており、言い方がいちいち尊大。胡散臭さ抜群。 事件は、マスターブックを焼くことで終結する。
「蛭間真(ひるま・まこと)」 ニールセンの先輩。情報工学科3年。ただし1年ダブっている。 シャープペンシルや定規など、ニールセンから色々借りていて中々返してくれない。
「教授(名前未定)」 作中、蛭間先輩から言及がある(と思う)が、ちゃんとは出てはこない(と思う)ので名前なし。
「田端を追っている勢力(アレ)」 アレ、は名前じゃなくて指示代名詞。 過去に神を殺した罪深き者。者といっても人間ではない……神を殺した瞬間に、人ではなくなってしまった。 「人間だった頃の自分の名前」が記されたマスターブックを抹消し、最強の存在になることを願っている。 過去の名前を言われたらなんかダメらしい。田端ほどのネイティブマスターでもまだ過去の名前を探しあてていない。 結果的には田端に名前を当てられ、消滅させられる。 アレが求めていたマスターブックは、アレの消滅後に焼かれる事となる。

田端はなぜマスターブックを焼いたのか?(後日談「田端仁志と飲みに行く話」 より)
「お詫びだよ。マスターブックは、遅かれ早かれ焼く予定だったんだ」 「あぁ……」  一週間経っても鮮明に思い出せる。  焼けていく本の音、まっしろな煙と肘の痛み。神の末裔だというこの男は、人であって人ではないモノと戦っていた。 「マスターブックがなくても、もう人間は検索方法を得ている。 図書館の蔵書検索システムだったり、議事録ログであったり、インターネットのSNSだったり。 巨大なアーカイブの端末としての携帯電話は、更に進化したネットワークを生み出した……だからもう、マスターブックの時代は終わっていた。 知ってたんだ。手放さなかったのは俺のエゴで、ニールセンを巻き込んだ事は反省してる。 ただ、行方をくらますためには、どのカテゴリにも属していない人間との新しいコネクションが必要だった」

実物のマスターブック概要。 天使ラジエルが書いた書物ではない。 ちょっと小さな国語辞典、のような厚さと大きさの本。 表紙・背表紙・裏面ともに何も書かれていない。表紙は皮。薄い茶色。 中は普通の辞典と同じように薄い紙で、小口には辞典と同じようにインデックス(灰色の目盛みたいなやつ)が見える。 筆記言語はアカシック語と呼ばれる、神格のみが書いたり読めたりする言語で構成されている。 ニールセンが脇から覗いた時には「料理のレシピ本に見えた」らしい。 アカシック語は光の言語。その人間が最も理解しやすい伝達方法に文字を変えて伝えてくる。 見る人間によって変化する、動く鏡のような文字なのだ。 田端仁志は、アカシック語を意識して傍観できる境地にまで達した人間であり、「書きつけられた当初の原文ままで」この本を読むことができる。 たとえ意識しなくても、法律を学ぶ田端にとっては「端的に事実だけが書かれた六法全書」のように見える。 マスターブックを使用するためには名前と項目と目的の段階をずっと下っていかなければならない。 田端はネイティブなのでまず使用言語を選ぶところから始める。 使用したい言語の頭文字を開いて検索し、指でその項目をなぞり (たとえば日本語で読みたいなら辞典を開いて「日本語」という文字を探し、そこの文字部分を指でなぞる) 一旦閉じる。 検索したいものの名前を探す。探す方法は2種類。 例えば「うさぎ」を探したい場合、 1 インデックスから「う」を見つけ開き、次に「うさ〜〜」になっているページを探し、「うさぎ」を見つけ、なぞって閉じる。 2 インデックス「う」を開き、インデックス部分を親指で押して閉じ、インデックス「さ」を開き、インデックス部分を親指で押して閉じ、 インデックス「ぎ」を開き「うさぎ」を見つけ、なぞって閉じる。 2の方法だと、開いたページには「うさぎ」から始まる言葉しか載っていないので、なぞって閉じるのが楽。 ただし何回も本をパタパタ閉じなければならないし、よほど熟知していなければ、インデックスを的確に開くことができないため遅い。 その次に、同様の手順で「うさぎ」の何の項目を調べたいかを指でなぞる(過去の事実だけが全て記載されている。 マスターブックは万能の書ではない。過去の事実だけしか記載されない。 しかし、現在を通りすぎた過去の事象は絶えず反映・更新されていく。 ニールセンのことを調べたければ、産まれたときから今現在(よりコンマ1秒ほど後)の事象を全てマスターブックで閲覧することができる。 ただし、事象だけなので、「あの時どう思ったか?」や「@@さんに恋心を抱いていたようだ」などといった、感情や憶測は記載されていない。




■ 断筆 ■

小説家を引退すると表明した斑気頭葉瑠(むらき・かみはる)へのインタビュー。 代表作は「火星の終りとエマージェンシー・アンダーバスト」 やれやれと言いながらも事件に巻き込まれていく、気だるげツルペタ幼女を書き、一躍、世界の斑気に。 若い頃の純粋な狂気は、愛する者を見つけ守るべき対象が産まれてから、少しずつ溶解し蒸発した。なんでもない平和な日常に居ることに慣れ、もう、狂気に磨きをかける事を……忘れてしまった。

■ 代替の天国 ■

天国に召されてしまった娘のかわりに入手した少年を、そのまま、娘に。死ぬ所まで似せて。娘のかわりに愛する。


■ リンク ■