作品未満。

■ 虹の使者 ■

 小雨が降った翌日。飛花高広がバイトを終えてアパートに戻ると、 スーツを着た男が缶ビールを飲みながらくつろいでいた。 「お邪魔してますヒカデジュモール・R・D・ジュピタ・カアキイさん」 「だっ、誰だ!?」 高広は身構えた。男はカラカラと空き缶をふり、おもむろに立ち上 がるとハンズアップ。肩をすくめて小首をかしげた。 「虹の使者から、支社を通して届きました。シシャだけに! こんな 長居させてしまって申し訳ない。帰りましょう」 「はぁ? ……っつうか、俺のビール!!」 「いやはやワタシ、世間からみたらその日暮らしのフリーターのようなもんで。極秘の任務で極貧です。ゴクヒだけに!」

■ ニガリ科捜査録 ■

@警視庁 捜査1課 特捜2係(別名:ニガリ科) 事件から5年以上経過し、事実上捜査打ち切り(迷宮入り)となった殺人事件を調査する係。 捜査一課の刑事の間ではニガリ科とも呼ばれている。 由来:未解決事件というのは基本的に解決しない。そのため、苦渋の捜査が続く。 配属されてから半年もたつと、まるでニガリを食っているかのような心境に陥るためこう呼ばれている。 刑事ドラマでいうところの「おみやさん」的なポジションの2係。 @特捜2係の人々 神成 寿楽(かまなり じゅらく)55才 窓際係長・やる気ない・事件配布はこの人の仕事・解決34件 北王子 英太(きたおうじ えいた)46才 体育会系のたたき上げ・地道な捜査はわりと得意・解決2件 丹島 紅子(にしま べにこ)25才 2係唯一の女性・ツンツンしている・解決1件 瀬南 樹(せなん いつき)34才 話の主人公・十年目の幽霊が視える・解決18件 河藤 卓磨(かとう たくま)24才 今年の春に配属してきたばかりの青年・解決0件 @瀬南の特殊能力 ある交通事故を境に能力に目覚める。樹には、「死後十年目の幽霊」が視えるのだ。 そのため 未解決事件の中でも特に事件発生から十年が経過しようとする事件を担当させられる。 @神成と瀬南 河藤が来る前は、神成と瀬南がペアを組んでおり、神成は特殊能力を知っている。 神成の解決業績は、だいたい瀬南が解決したもので、業績を横取りしていた。 そのため瀬南にとって神成は憎い存在であったが、心の中で折り合いを付け、 今では事件解決することこそが刑事たる意味であり、誰が解決したかはさほど問題ではないと思っている。 @北王子と瀬南 北王子は、あからさまに瀬南のことをライバル視している。 瀬南の能力は知らない。時々ひとりでブツブツ独り言をくりかえす変人のくせに、なんで解決できるんだよと思っている。 瀬南のほうは、北王子はとっつきにくくていやだなぁと思っている。 @丹島と瀬南 丹島は、瀬南の能力を「サイコメトリング」だと思い込んでいる。でなければ解決なんてできない。 丹島の唯一の解決事件も、(事件の被害者が丁度死後十年目だったから)色々とアドバイスした瀬南のおかげだった。 恋愛感情はない。サイコメトリングだと思い込んでいるので、自分の暗い過去を見られるのではないかという恐怖のほうが勝っている。 単純に「アイツ嫌い」と公言してしまう北王子のほうがむしろ同僚として好きだしやっていけると思っている。 瀬南のほうは、ツンツン王女様としか見ていない。王子と王女でお似合いとも思っている。 @河藤と瀬南 河藤も最初は、瀬南の事を(被害者の墓石の前で)ブツブツ何かを言う変人だと思っていたが、その解決スピードの速さから徐々に尊敬しはじめる。 なぜか知らないが神成係長からよく十年目の未解決事件捜査を言い渡されるので、自分の十年前をよく思い出すようになった。 十年前、14才だった自分が事件に巻き込まれた時にちょっとだけ助けてくれた刑事さんがいて、その人が瀬南とよくかぶるようになる。(というか実は24才のときの瀬南である。 瀬南は現時点ではまだ河藤に能力のことを喋ってはいない。 理由は、若いから。 力があると過信する。瀬南がまだ24才だった頃、救えなかった少年がいた。 その時まだ瀬南は2係ではなかったが、力があると過信しすぎた自分のミスだった。(ちなみにその少年が河藤である。苗字が変わっているので気付いていない。 @河藤と瀬南の過去について 実は神成は知っているが、あえて伏せて観察している。 過去に会ったことがあるとも知らない、二人のぶつかり合いなどは、極上の暇つぶしである。 @瀬南の捜査方法 1 被害者の墓石の前まで行く。だいたいの幽霊は殺された未練で現世に留まっているため、呼ぶと出てくる。 事件解決への協力を要請する。 しかしまぁだいたい「背後から突然頭を殴られた」だの「目だし帽をかぶっていた」だので、すぐに犯人特定につながるような重要情報は得られない。 2 ただし、さらわれた場所や事件が起きた本当の場所だけは幽霊が知っているので、連れて行ってもらう。 一旦署に戻る。 3 その近辺での「十年前」を入念に調べ上げる。 土地開発などで新しくマンションが建つケースもあるし、聞き込みの過程では、日時を言うより「その周囲で十年前に起こった印象的な出来事」を言ったほうが記憶想起に役立つ。 また、遺留品の入手も忘れずに行う。 協力的な幽霊でまだ瀬南に憑いている場合は、被害者本人のものかどうか聞いたりする。 北王子に立ち聞きされ、「やっぱり独りでブツブツ言ってる……変人だ」と再三思われたりする。 4 聞き込み開始。といっても、目新しい情報が出ればもうけもので、だいたいは徒労に終わる。 幽霊が証言してくれた重要な目撃者が、引越している場合もあったりするので、後日その人の所まで聞きに行くこともある。 幽霊が何か言うまでは、被害者家族には滅多に聞き込みをしない。経験則で無駄。幽霊が家族について何か言うようであれば、ほぼ100%の確率で家族の誰かが犯人。 5 遺体が移動されている場合などはそちらまで行って聞き込み開始。 6 ここでようやく、当時の捜査資料を洗い出す。 先に聞き込みをするのは、捜査資料などで先入観を持たないための瀬南のオリジナル策。丹島などは、先に捜査資料を洗い出すタイプ。 幽霊からの口出しで新たな手掛かりが見つかったり、当時の資料と今の聞き込みの証言で食い違う点が見つかったりする。 7 進展し、容疑者が浮上する。 しかしそこは未解決事件なので、慎重に裏付け捜査を行う。容疑者を尾行したり張ったり経歴を調べたり色々頑張る。 8 ようやく容疑者にコンタクトを取る。もちろん否認するが、裏付けでほぼ確定というところまできている。 あとは自白があればいい感じ。 というわけで幽霊に協力してもらって枕元に立ってもらったりする。 案外アッサリ自白する。 解決。 9 取材記者を撒いて、被害者の墓石まで行く。 幽霊が天に昇っていったりスウと消えたりするのを見届ける。 河藤に「おかしな人だ」と思われたりするのはかまわずに見届ける。 おわり。

■ 二月の部屋 ■

12の部屋がある下宿屋。 それぞれに月の名前が入っている。 主人公たちはそれぞれの誕生月にちなんだ部屋にいて、部屋の内装もそこはかとなく、そうなっている。主人公は4月の部屋。隣人は5月の部屋。管理人は1月の部屋に住んでいる。 2月の部屋には誰も入っていない。管理人が開けてはいけないと言うからだ。 下宿は低料金で、料金にゴハン代も入っているためタダめし。 管理人はなにかしらの何かで生計をたてているらしい。 ある時主人公の隣の部屋に住む人が、2月の部屋を開けてしまう。うぐいす(誘拐した幼女)を育てていたのだ。うぐいすが逃げて行き、管理人は自殺し、下宿はつぶされた。

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