今日は、火曜日。
「いらっしゃいませー!」
結局あの日から一週間、私はこのコンビニに寄りませんでした。店員
さんの家にも、その近くにも。
だから一週間ぶり。
彼は、パンの陳列を直すふりをして私にそっと
「ひさしぶり」
とささやきました。
やさしさにドキリとして店員さんの手首をつかむと、ザラっとした
感触が、増えて……
「どうして増えているんですか」
「君も……どうして増えてるのかな」
私、バカだ。
わざわざ確認して安心するなんて。
★
最初に来たときには気付かなかったけれどこの部屋には色んなもの
が足りない。と私は思い、布団はどこだろうと探し始めます。
本当に、足りない部屋。
探したけれど布団もない。キッチンにはサランラップがない。カー
テンをまとめる秋刀魚の形の布もない。トイレットペーパーがない。
ストーブがない。カーペットもない……。
仕方なく、ピアノの椅子に座って彼を待つことにしました。
けれど。
いつまでたっても彼は来ずに、私はのろのろと帰り支度を始めます。
涙が出そうになりました。
ココ何年か、そんな予感すらなかったのに。
「――どこいってたの?」
部屋につくと、ベッドにお姉ちゃんが座っていて、私の雑誌を読んで
いて。
とたんに、ひどく嫌な気分になります。
「別に。友達のところ」
「ふーん」
お姉ちゃんは働いている。スーパーの、レジの仕事。
「ねえ、でも香水のにおいするよ」
「友達のなの」
「ふーん……」
私はお姉ちゃんのこと、そんなに好きじゃない。
「お姉ちゃんその、ふーん、ってやめてよ」
「なんでーぇ? ね、それ男ものの香水だよね?」
私は答えなかった。
お姉ちゃんなんて、いつも男のことしか頭にないんだ。バカだから。
だからスーパーなんかで働いてるんだ。
私は違う。私はたくさん勉強して、いい大学に行って、会社に就職
して、たくさん稼いで……なんのために?
私はお姉ちゃんを追い出したあとで、いつもより勢いよく、ざくざく
と切り始めました。
『いつきてもいいから』
うそつきな店員さんのコトバが、すきまから、ふきつづける。
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