≪PRESENTATION WRIST CUT≫

H side 1


 大事なのは、私が私を認めること。
 私って誰?
 私にできることって何?
 私って、私って私って。私って私って私って私って。
 あ。
 疲れた。
 私は、嫌なことがあったとき手首を切ります。
 すごい。
 私って生きてる。
 こんなに血が出てる。血が止まった。傷ができる。治っていく。
 どうして生きてるのかなぁ。
 私は生きたいのかなぁ。
 私は逝きたいのかなぁ。
 私はなんでもない日――特に土曜日――に手首を切ります。
 痛い。
 当たり前に痛いよ。
 この感情は何?
 私は生きたいって思ってるの?
 ザラザラします。
 まだ治らないのは、私のココロの傷。

    ★

 家から出て、坂道をくだったらコンビニ。
「いらっしゃいませー!」
 朝から元気でなによりな店員さんの手首に、私と同じ傷痕を見受け
たのは
「あんまん、ひとつ下さい」
「はい! あんまんを、おひとつですね」
 つい最近のコト。
 よほど話しかけようかと思った。
 でも
「92円になります」
 どうしてこの人はこんなに笑顔なんだろう?
 疑問が続いた学校からの帰り道。気づくと、あの細い店員さんが前
を歩いていた。
 商店街の人ごみはまばらで、興味本位で歩調をゆるめた。
 と。
 店員さんは、くる、と、振り向いて
「………」
 微笑んで走って逃げた。
 次の日。
 私は用もないのに、また、あの店員さんの居るコンビニへ行った。
「いらっしゃいませ、お預かりいたします!」
 傷、が、
「あの……」
「はい?」
「あ、いえ。あと肉まんひとつ」
「はい! 肉まんが、おひとつですね」
 傷が、増えていた。



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--Presentation by ko-ka--