■ 深々と降る雨 ■

 自分の唇に手をあてて
 外は今日も音のない雨
 あぁそうだ思い出す

 一度だけ僕が 君の紫の唇に
 触れた日のあの雨は
 かなり激しく降っていたハズなのに
 僕の記憶には 音がなくて
 スローモーションの
 透明な粒しか 映ってなくて
 僕は立ちつくしていて
 この世の終わりに 絶望もなく
 ただ降りそそぐ雨に向かって
 やっと終わったんだな と
 呟いている そんな記憶なんて
 今は 実際にあったのか
 過去はもぉ分からないけれど

 自分の唇に手をあてて
 外は今日も音のない雨
 あぁそうだ思い出す

 一度だけ僕が 君の濡れた頬に
 吐息を重ねた時の瞳
 とても奇麗で涙したハズなのに
 僕の記憶には 色がなくて
 灰色のガレキと
 悲しい傷しか 映ってなくて
 僕は泣き崩れていて
 この世の終わりに 希望すらなく
 ただ降りそそぐ雨に向かって
 もぉ明日は来ないのか と
 問いかけている そんな記憶なんて
 今は 実際にあったのか
 過去はもぉ分からないけれど

 自分の唇に手をあてて
 外は今日も音のない雨
 あぁそうだ思い出す