■ 月のエテンカ ■

 息子の遺影をかき抱いて 彼はエテンカヘ
 世界の果てにあるという 断崖の死者の国へ

 青闇と月のエテンカ 平たい皿の外
 地球のはじから飛び立つ 三光鳥

 ツキヒ ホシ ホ イホイ

 滝は夜へ落ち 森はななめに広がるだろう
 砂漠の砂は星屑と落ち キラヒラまたたき流れる
 海に月光の道が続けば きっと渡って辿り着けると


 波打つ際に親指をひたし 彼は息子をかき抱いた
 跪くのは祈りに似た 諦めの吐息震えている

 冷たい月が
 冷たい 夜が

「私が死なずに、誰が息子をなぐさめる。
 けれど私は臆病だった、私を許しておくれ。
 老いて、エテンカに着くころにはきっと……。
 顔さえ忘れていると」


 飛ぶ 青闇色の鳥
 彗星のような尾を引き 孤独に旅立つ


 エテンカへ    ツキヒ ホシ ホ イホイ

 エテンカへ    ツキヒ ホシ ホ イホイ