■ 401-410 ■

名ばかりの薄暑を恨み熱射病

夏浅く眠りも浅くパン朝食う

茄子植える去年の雪辱晴らすべく

立夏過ぎ返事もなく項垂れている

花にさえ文句言われる母の日苦し

辰雄忌に村を回りて感涙す

初恋をいちごミルクにとかす夜

タケノコも竹刀に育つ子の勇志

十三年野蒜の花を海岸に

初がつお初まぐろ焼けばもうツナ

■ 411-420 ■

悠久の多賀城見守る菖蒲園

五月過ぎ七月も過ぎ嗚呼九月

孤独極め月に吠える朔太郎忌

つく日差し夏めく素足あくび付き

練習後ポツリと汗が夏の月

アイスコーヒー滲み作画失敗

ライブ後の笑顔キラリと夏の星

サイダーに沈むチェリーとボクの恋

夜深々冷酒を妻と飲み交わす

白松と水羊羹は決めている

■ 421-430 ■

初土用ぬかりなく子に特上を

発熱しゼリーの中に宇宙見る

暮れなずむ帰り路草笛吹きつつ

本棚のはしから団扇出す日来た

夜釣りする父の笑顔も夢の中

子の寝相テントウムシに似ている

虫の声聴きて晩夏を知る帰り

風死す恋も何もかも

旅先のソルティドッグはスイカ入り

新ショウガ食わず嫌いもここまでか

■ 431-433 ■

息子とオナモミ対決俺の勝ち

素振り100本汗だくの朝焼け

熱風が嘆く賢王の崩御

剣道のかけ声遠く夏の山

受付にマイナンバーをかざす冬

秋になりようやく再開ランニング

病院の開錠を待つ秋の列

小児科も秋色になるステッカー

ちらちらと長蛇の列に秋混じる

晴れ間から秋の気配が手を振る

■ 441-450 ■

桔梗咲き今年もめぐった命日

窓開けて色付く隣家の庭と鳥

明け方の通り雨から秋薫る

忙しなく拝み発つ送り火も見ず

クワガタを見に行きたいなと言うだけ

夏盛り光あふれる庭を行く

盆先に我が子を迎える準備する

旅先の不思議なお菓子食べる夏

ハンバーガー夏の三陸満喫す

夏の海みわたす温泉のぼせたな

■ 451-460 ■

紫蘇刻み暮れる台所しずかに

トマト食う川辺カゴにも浮くトマト

メロン食べスイカ食べての追いメロン

パソコンが熱風吐き出しブルスクだ

河童忌に蔵書見返しペンを持つ

虫干しに蔵書出すなり読みふける

売れないと嘆くばかりの夏蜜柑

百貨店出張はいつも夏盛り

退院日玄関くぐり蝉時雨

夕凪に背中合わせで恋語る

■ 461-470 ■

羽キラリ清夏の空に駆けだして

納涼に怪談話つかれたね

激安のホテル壁から蝉時雨

熱風を巻いてかけだす五回裏

汗たらり楽しむ夏の一人旅

夏祭りインスタあげて独り笑み

蝉時雨降りて末路のホームレス

倒れたホームレス無視して過ぎる夏

冷コーにガムシロ何個入るかな

聞く耳も持たぬ背中に蝉時雨

■ 471-480 ■

梅雨あけて雲間つらぬく蝉の声

蝉鳴きてかきけされた亡き妻の声

梅雨明けて洗濯ようやく竿かけて

大量のシュレッダー蝉のごときに

窓際に張り付くカエルと目を交わす

盆のごちそう慣れない作り笑い

盆終り自宅でようやく息を吸う

屋台めし花火の音が隠し味

アイス融け終わりを感じる日暮れかな

かき氷食べきれず年を感ずる

■ 481-490 ■

虫の声季節がガラリと変わる夜

冷夏の貯金はたいていく残暑

ウキウキと盆のお金を見るわが子

カニ食べて爪の部分を動かすぞ

12階たどりついたは盆の歯科

しりとりで盆の渋滞もたのしく

お盆玉ベイブレードを買う子かな

迎え火に花火を追加しパーティーだ

盆恒例スイカのおじさん訪問す

引きこもり鈴虫の音で季節知る

■ 491-500 ■

子供が言う「急な冷え込みやる気でない」

秋晴れの散歩道での謎解き

酔い回る君の介抱秋深く

紅葉を見にいこうようと君が言う

色づいた落ち葉がそぼる明けの空

なんとなくススキを持ってチャリに挿す

秋花粉のどの乾燥カリン飴

道端に霜が降りても詩は降りず

ススキ対セイダカアワダチゾウ

早すぎる秋の深まり準備せな