■ 301-310 ■

春芳る昼からオジども酒盛り中

雪女郎きびす返して山目覚め

冬凪ぎて妻の機嫌はなお波浪

しがみつく霧氷によく似た劣情

このそりは透明人間乗せてます

息子の手妻の手袋に訪問中

ぶらんこに親友の影見つけたり

すじこ派とたらこ派同居十年目

山吹が行進していく通学路

山つつじ椿と言いはる春の妻

■ 310-320 ■

メーデーとブラック勤めの友叫ぶ

事始め道具の場所をド忘れし

ケシ乱れ咲く廃屋にただいまを

虹も見ず老若男女が手にスマフォ

この馬はきっと走ると青田買い

飛び立つ蜻蛉青田をどこまでも

スイカ切る老いた包丁持つ母よ

ワッショイの声をたよりに夜道急く

手をつなぎ流星の丘誓い合う

君はレタスばかりたまには僕をみて

■ 320-330 ■

レトルトとビーカー片手にレタス悔い

わけぎ切る裸エプロンわき毛みえ

注連縄をあむ祖父ねる猫ひかる雪

サーファーら帰る間際にゴミ広い

この部屋は蚊取線香効果なし

紅葉降る日暮れは師父の背中かな

サクサクと落ち葉踏みつけ菓子食べる

頃合いと装う山にレンズ向け

インスタも装う山でカラフルに

あの頃を思い出しては芋煮会

■ 330-340 ■

君のゆめ白樺香る七回忌

風邪ごとに桃缶みかんとローテーション

奇声あげ煙る露天で転ぶ子ら

けむり湯の向こうに出づる初日の出

入院しさくら過ぎゆく窓見上げ

さくら散り道もなかばで立ち止る

生き方を桜に例えて金散らす

へいタクシー桜並木の向こうまで

青葉萌ゆ無人の駅で深呼吸

■ 340-350 ■

タクシーを呼び止めシートに桜落ち

待ち合いに白いマスクの雪模様

コロナ禍の青葉通りに鳥の声

テレワークうぐいす鳴いて笑い合い

外出を自粛しつつもエア花見

負けないぞテイクアウトで買い支え

コロナより熱中症が怖すぎる

わさびよお前はいつか絶対食う

あの人ら今から芋煮すんじゃねえ?

梅雨知らず蓼ばかり食う本の虫

■ 350-360 ■

せせらぎと凍み入る湯けむり白き肌

花巻の湯に降る白と笑い声

甲子園あつき叫びに感涙す

枝豆と酒の無限ループに酔う

暮れの赤とんぼ横目に旅客機

わが家名物梨の争奪戦

記憶から大豆の皮打つ木槌を

鈴虫の鳴き声これとしっかたす

名月より団子三兄弟と食べ

■ 360-370 ■

盆の事故トンネル内の風物詩

迎へ梅雨にしてはちょっとヤバすぎ

こんな雨乞うたわけじゃない極地すぎ

売り歩く未来のホタルLED

田植えの遠い記憶父の声より

梅雨の星流れた恋の指先に

今年も燕が巣立ち献杯する

立夏に思い出す彼の死にざま

刈る前に立ち入りナウシカごっこ

床起きて冷やし甘酒手渡され

■ 370-380 ■

夏風邪やお願いだからもう来るな

夏の海イカを片手に眺める子

さくら咲き鳥も啼く飲みすぎ吐く

目を細め首をさすりて椿落つ

新月に香る木蓮みちしるべ

桜ときいて来ました会費いくら?

あの春は遠くにかすみ名も失くし

つくし摘み天ぷらにしたいやらんけど

から籠もる君の心は春キャベツ

マスクこれコロナじゃないから花粉症

■ 380-390 ■

微睡に昨日と同じ風薫り

家電特集をめくる春風

トーストにズッキーニ意外と合うな

神の旅第二皇女はかく語り

袴着て向かう我が子の初試合

好きと告ぐ夏の詐術に惑う

熊祭り凍った星の悲鳴聞く

檸檬忌にレモンどんどん盛れと書き

御神楽や緑の猫が熱く舞う

胸にあて心の紙を漉きとおし

■ 390-400 ■

風鈴を見上げて眠る子の吐息

斬り返す銀ヤンマの群れ剣道部

梅雨の棚の匂いは本の虫向け

春過ぎてそろそろアレも換え時か

剣道の熱気に夏を予感す

レモン入りロックのジンにキュウリ合う

卓上の新茶すすりつ新作を

ジャガイモは新でも古でもカレーだけ

賀茂祭に出かけてみたい無理やけど

新茶淹れたは良いものの暑くて無理