■ 201-210 ■
五月雨の車中で待ちぬ父の影
雨降ればベランダみょうがも嬉しそう
梅雨時期の送り迎えはめんどいな
雪解けと思うそばから夏至来たり
夏至の夜の窓からまんどろ銀の爪
父の帰りを待つ駅かさ流し見て
春の花摘む娘あれば踏む息子
アラさびじゃフェーンも届かぬやませの地
長沼やボートの熱気も今は無く
信号で停まるとなりに青紫陽花
五月雨の車中で待ちぬ父の影
雨降ればベランダみょうがも嬉しそう
梅雨時期の送り迎えはめんどいな
雪解けと思うそばから夏至来たり
夏至の夜の窓からまんどろ銀の爪
父の帰りを待つ駅かさ流し見て
春の花摘む娘あれば踏む息子
アラさびじゃフェーンも届かぬやませの地
長沼やボートの熱気も今は無く
信号で停まるとなりに青紫陽花
白魚を踊らせ続ける我が子かな
野を焼けば土手までせまる岩木川
のんべえの君にはチョコよりバランタイン
この鳩も陽気終われば鷹成るか
五月雨に唐傘さして江戸気分
少年は半夏生のよる羽化し
あの店で土用の予約を今年こそ
晩夏のごとし髪を垂れ泣くおんな
四迷忌にくたばりぞこねたラムネ瓶
草茂る廃墟の奥にトマト投げ
今年の反省も寄せ鍋の具材
しばれでら夜さ干すモヂあっちゃの手
仕留めて死と目で見下す猟人よ
後ろ向く新入生に手振る親
散るもみじ見上げた君のほほ紅く
「コレ炭火焙煎?」「市販の安物…」
負けられぬ豆まき前の鬼ジャンケン
二重まわしのマントで文学館へ
厄落とし行きつ戻りつ榊の葉
ストーブにかざす素足はみかん色
雪が沿う夢立つ光氷る橋
門松立てる家過ぎて足早に
整った囲炉裏にみる主の手際
ピウピウとカマイタチ鳴く土手の空
渡り鳥冬探し我も所在なく
今日のメシは寒いので初鍋とする
ぼんやりと妄想するうち大寒
小寒とあなどり裸足しみる板
寒の入り酒と笑いで温かく
過去の声ふり向けば記憶呼ぶ火鉢
つぼ湯から見上げる薄雲つばめ舞い
かほどりの鳴き声見つける蜘蛛の糸
「もう知らない」フイッとうそぶく鳥と君
巣立つ子ら雁の名残りのごとき椅子
花守も夜は花見てカップ酒
春服のセールにつられて千鳥足
晴れた日は庭にゴザ敷き桜もち
雪囲いとれて伸びする我が家の木
箱なぞりひいなを納める娘の手
十三湊しじみ食いつつ母と甥
散り落ちたセキレイの羽根と芝桜
明日のよは桜散るぞと犬が吠え
草もちが好きな息子のために買う
旅先の桜並木はかくありて
乙女立つ湖に映える紅葉かな
氷抱きいつもきしきし泣いている
あてどない旅の最後は新そばで
春日のあいた井戸の淵覗き
涼しき手秋のかさねを選ぶ妻
明日におびえるのも飽いた椿と死す
ひとすじの朝日に焦がれる麦と恋
蛙消音装置つけ日暮れ待つ
カリマが怖がる五月晴れを隠す
しろうるりぬるりとあらわる半夏生
踏青こえて谷間に死す若獅子
走りきりゴクリ飲み込むラムネ染み
夏至の月夜に人形踊るカタリ
キーンと冷えた頭に手をあてつつ
花火散り私の恋も秘密裏に
涼むは喫煙室くゆらすは噂
土下座して謝る先の萩の靴
毛糸編む指先みとれて鍋焦がす
新品の綿入れようと一番町
夢雪はコートの少年透かして
霜枯れた土手に佇むホームレス
冬薔薇のトゲに刺されたバレンタイン
血で錆びた短針供養し中級へ
追難の方角かよひし姫(めご)の家
あの人さァ牛乳寒天好きなの
君にきた牛鍋定食ひとくちネッ?
行年悔いばかり月仰ぐ瞳
雨氷の中にユメ巡り溶け亡く
木枯らしが公園遊び散らかして
靄よモヤ!よもや靄とはもうヤァね
鯨幕冬の日つめたひ祖父氷る
寒のあめ熱燗つけるは女将の手
枯れ蔦の洋館住むは猫ばかり
雪吊りも今年は意味なく冬終わる
火の番もすっかり慣れて酒片手
雪だるま動きだすかと見張る子ら
冴えわたる空と烏の合唱団
寒潮釣れるか垂らす針じっと無心
父亡きて厳しい寒さ我が心
たすき持ち冬霧深き箱根路へ
雪きた雪きた子供ら走りだし
義母に日向ぼこりをすくわれ
古暦切ってメモにす貧乏性
社会鍋スル―の人ごみ時世みえ
十夜を越えて神堕ちし山に死す
ついに来た寒波に歓声スキーヤー