■ 01-10 ■

夏めく目奥に太陽手にアイス

かき氷に少量のジンかけ美味し

あなたに愛され私のほほに雪とけ落つ

初夏のアメ琥珀のミントジュレップ回し

春一番みあげて散った不合格

お母さんマスクを取るとヒゲあるよ

漱石忌ガチャ四百でも来ずじまい

クリスマスサンタは来ずにサンマ食う

七五三一時間待ち九枚撮り

夜勤明け家路を急ぐ息白く

■ 10-20 ■

冬服がサイズアウトだ再ダイエット

大根で豚ミルフィーユ母の知恵

生はムリ牡蠣むくなんてムリ

地吹雪が恋しく思う太平洋側

納骨の帰途に空風ココロ刺す

冬だって云いつつ素足にサンダルだ

火狐で狐火検索新時代

小春を知らず駆ける子をブーツで追う

ストーブにあぶられ耳が食べごろに

しわがれた餅米洗う祖母笑う

■ 20-30 ■

冬の星おちては白く道積もる

白鳥を横目に走る土手でこけ

葉牡丹が冷えた涙で濡れそぼる

冬ぬくしベショベショだるまにベショ兎

節分の鬼役ジャンケンわざと負け

今年こそ日記買うぞと思うだけ

確信犯ひそむ炬燵にねこじゃらし

賀状書く手間がはぶける忌中かな

立冬を祝い飛び散る蜜柑皮

しまき月マフラーつかむ小さき手

■ 30-40 ■

来たが池普請つぎ来ようまた来よう

兎もふっもっふもふもふもふもっふ

両手にはポインセチアとホールケーキ

花咲かないポインセチアに文句の子

スキ―してスケートもしてヒビも出て

正直に言うとラグビーつまらない

玉子酒あこがれすぎて買い逃す

湯ざめ前にボア―よと妻のドライヤー

お歳暮を贈る住所が増えていく

天皇と妹が同じ誕生日

■ 40-50 ■

雑踏に侘助一輪手振る妻

ツララを手折り手伝う風の甥

平野からお岩木山の眠り見ゆ

初霜に心踊らし踏み鳴らす

初雪にはしゃいだ結果が吸入器

アンコウを食わず嫌いで数十年

嫁と俺おでんの具めぐりケンカ中

湯豆腐のコンブについても喧嘩中

かき集め枯葉屋さんをはじめる子

寒菊をそなえる仏間の隙間風

■ 50-60 ■

塩鮭に海苔納豆米味噌汁も

かんじきも今や倉庫の奥眠る

石炭をトーマスで知る息子かな

雪囲う男手ないと祖母なげく

竹馬に乗れぬ我が子に手ほどきす

冬の星まどろみ巡る猫の爪

神の留守いつもより多くチョコ食い

冬の空ひとりになった散歩道

冬の雲キャラメルかけて飲みたいな

冬の月に砂時計かざす三分間

■ 60-70 ■

冬の水クリーム意味なく割れる指

冬の山あの子の黄の靴ねむる夜

早梅が鳥は来ぬかと恋つける

蒟蒻を掘る手袋に冬眠虫

神社立つ羽織を弾く初時雨

故郷への線路にまたいだ冬の虹

アツアツの鮪といただく生姜酒

雪合戦きょうだい喧嘩は決着か

枯れ蓮の池に映るは未亡人

練炭七輪に入れ待つ死静か

■ 70-80 ■

餅食えば除夜が鳴るなり居間十時

高三のどてらに夜食おいこみだ

事始め言うやいなやの布団惰眠

横光忌川端実装さァ課金

冬田を埋め尽くし啼く鳥の名は

大晦日バイト先でのオメデトウ

創作の意欲も画力も冬眠す

北風も逃げ出してく二層サッシ

雪晴れて急ぎ新聞つっかけて

子眠る夜隙間風の道我ふさぐ

■ 80-90 ■

あの人の着信こころは冬の波

室内に水仙入れる妹と

冬めくざわめく歳末セール行く

飴含みみぞれを味わう冬の朝

冬晴れに干す毛布かわいていないな

ホラーもの見せられ叫ぶ年の暮れ

厄払い効果なく父を見送る

銀杏落ち並木に響くJAZZの音

咳すれば三人ともインフル

大根を洗剤で洗うアホ娘

■ 90-100 ■

雪をかき眼鏡の形に焼ける顔

湯気立てて台所に立つ父息子

着ぶくれたダルマ独りで神社行く

母作る手編みセーター謎模様

再加熱おぞうに煮すぎて餅ドロリ

冬の季語制覇とばかりに駄作生む

ラボで迎える年の瀬にラブなど無し

熱燗をぬるめにつける妻のクセ

失敗したからどうぞ甘酒ハイ

熊手持ち注連縄ごっこはお砂場で