■ 黒い枕 With:ユヅル ■
■ リレー初稿 ■
まぶたの奥は長い
長い髪は 歪だ
歪む布に歯をたて
噛み切りたいような絆
アンタダレ? 黒い少女の手に
あるはずよ? 黒い寝床の皺に
アケナサイ? ひどく笑った影の
愛もない? 黒い枕に縋るだけ
すすりと 爪は 夢に逃げ
にがい 跡を あざ嗤う
カン カンカンカン
感じ 寒冷頭蓋の轍
朝を 噛んで悲しむ彼の
枕は 関心なく歪む
少女は 際限なく長い
目蓋の 奥の廊下に眠る
あの 黒い
枕を抱いて
■ 改稿 M ■
そのまぶたの奥は
その長めの髪は
歪だ
歪む
布に歯を ガヂリ たてて
噛み切り ゾゾリ 絆なぞ
あざ嗤った変更線
カン カンカンカン
浸りきった地平線
朝を噛んで ギチリ 少女の手に
悲しむ彼の ガガリ 黒いマクラ
マクラ
枕
まくら
枕は関心なく歪む
少女はまぶたの奥の
少女は廊下の奥深く
あの 黒い
枕を抱いて
銀の羊の夢を見る
■ 改稿 Y ■
眼球の膜 くの字 巻く
頬骨の髪 くの字 噛む
久遠でもない、宵に
寸評みたいな、苦悩で 彼は
頼んでもない、宵は
群氷みたいな、左脳を 動かし
少女は相変わらず
カンカッカ ン
枕に 塗る 抱く 望みごと
歯軋りじゃない ジ ジリ
親愛なる、絆へ ゾォリ
枕の関心ない アクビ
渡り廊下は モヤリ
彼の部屋にて
おびただしい、加音 の
ソシララ、良いカノン 響く
彼の、髪から いちばん近い枕を
少女は抱いて いちばんフェアな夢を見る
■ 改稿 M ■
眼帯をめくる
と
めく
るめくる
鎖骨をめくる
と
めく
るめくる
足裏をめくる
左脳は
人面魚を生み出し
右脳は
酔った赤提灯をブチ壊す
死脳か
うらら
うらら
少女の手に
うらら
うらら
黒い 枕
うらら
うらら
げそうり彼の廊下はそそおり切れの投下効果
おびただしいレコードの山これはきずだそれはきずな
カノン
ハノン
カイン
アベル
彼の髪はいつでも少女の枕に繋がれている
夢を食べて死に至れり尽くせりおどろおどろの手を
■ 改稿 M ■
彼は眠る 黒い枕をしいて
彼女は眠る 黒い枕の下に
めくるめく酔った恍惚の庭
左脳の毒は右足にマワル
眼球の裏側
眼帯の泣き顔
うららしき廊下に
羊は
角をたてる
奥の襖の
褥の
梁の
枕はさんざんとゆれ
さざんかと笑う
■ 改稿 M ■
さんざんさざんか かれのかかれんに
めるめくめくるめ かのかじょかのじょの
黒い 眼球
裏側 眼帯
にのせのへびの そのどくやぶから
くるりとするり せかいがせいかい
羊は 笑う
角が 立つ
さぁさぁねむり おねむりなさい
しょうじょはわらう なきがおふせぬ
■ 改稿 Y ■
泣いた覚えもないのに
朝起きると、枕が真っ黒になっていました
今、僕の涙を誰が持っているのか
考えています
引っ越す前の
マンションの6階、7階くらいから
下に誰もいないか
確かめた時が、最後に泣いた時だと思います
家族で笑いあっている夢は
別段、空しくありませんでした
泣いた覚えはありません
今、とても泣きたいのに
僕の涙を持っている人が見つかりません
■ 改稿 M ■
黒い枕が笑うと
日本は沈むという
濡れた黒い枕は
黒ではない と 妹が言います
あの頃と同じように
涙で
濡れることはない と 妹が言います
嘘です
彼女 は彼です
日本は浮きます
白い枕は笑いません