■ カーネーション ■

■ With:そうらしい ■

 「狂ったように咲く満月、いつかのうたげ。
  うっとりとする光、そそぐ。
  、、あぁ、同じ罪をおかすのか。
  ワタシをくくるは、かいこの糸。」

 「ふかいひいろ、の海で、
  探し歩いてた。ぼく
  幼い密室、小さなまぶた、閉じて。
  声がする、くちてこなれた古く太い糸
  心、惹きつけ、わずかな期待。」

 彼は苦しそうに両手をあわせ
 ただ無事であることだけを祈りながらも、
 うれしそうな顔して、
 「あと、どのくらいですか?」と、言う。
 虚ろにみえる彼女のうるんだ眼。
 何かを確かめ合うよう、見つめる。

 ひずんだ朝焼け、この部屋を変えて、
 彼女はちぎれそうに、痛いと叫ぶ。
 続く悲鳴。でも、最後の夜だから。

 「あぁ、また。同じ、罪、犯す。
  もし、朝になったというなら、
  糸、切ってもいいの?」

 「出口は、とても狭く。
  ぼくは踊るよ、ゆっくりと。
  罪過があるというのなら
  真っ赤にまみれて、涙を流すよ。
  呼ぶ声がする、最後にぼくは足を出んだ。
  心やすらぐ海に向け、別れ告げて
  泣き叫ぶ。」

 たわんだ朝焼けが、この部屋を変えてく。
 彼女はちぎれそうに、烈しく息をあげている。
 ゆがんだ朝焼けが、この部屋を生にする。
 彼は赤子抱いて、彼女へほほえむ。

 罪じゃない、これだけは。
 過去に彼女が流した、稚児たちへのみそぎ。
 三人を包む拍手は、せめてもの贈りもの。

 綺麗な朝だから、
 初々しい朝だから、
 まっとうき最初の朝だから…。

 「大きな声あげ、生き生きとした朝の空気、
  胸はちきれんばかりに、心ゆくまで、ぼくは吸い込む。
  ありがとう、あらん限りのありがとうと言うように。」

 「雪の朝、とおくはるかに感じる、日差しの中で、ワタシはまだ生きてていいよと、
  誰かに、言われた、気がする。」


 うけつがれる、モノ。
 そうなれない、モノ。
 区別ない泡玉のように、
 浮かんで、はじけて…。
 私、炭酸水のよろめき。
 おわり、はじまりだから、
 そう、なめらかな、偽りない、
 いのりを込めて、
 カーネーション、
 あなたの胸にさせたなら…。
 リンとなった、はなのねと、
 分子退け、あわのおと、
 たおやかに、と、去り。

 おぉ、カロン。
 深くくらいの海の中、
 私はやみを持っていく、
 光、ざあっと粉々に散って、
 まるで夏の花火のように輝いて消えた。
 − またたくま。
 そうして、さいご、ひかり。
 そのあと、たどる。