■ 負荷逆、海辺より ■

■ With:そうらしい ■

 (log 0)メネシス(特異点)

 存在さえなかった頃
 コンチェルトが二乗をはじき出した
 回帰された空間の海
 独りの恐怖に怯え震えはしり出した

 うえから見ると浮かんでいる
 まるいうきわとビーチボール
 ポワンカレには届かなかった
 どうもありがとうこの島よりお届け
 橋はぜんぶで7つ
 どれも二度と通らずに
 ぜんぶ渡りきれる?

 (思い出す)異国の言葉(ゆえに)

 静観していたあの夜
 あなたの泣き顔が潤みうずくまる
 そう
 再帰された
 思い出も
 なにも
 痛み
 なんていうの?

 言えなかったの?
 言わなかったの?

 一文字違いのすれ違い
 ラプラスの魔術に翻弄され
 四葉が咲きはじめ
 啓蟄の鐘が 断片を繋ごうと
 鳴り
 ひびいて
 走る 動作 緩慢に
 いわなくていい
 帰り道 記憶なく ただ
 猫を 見たあの白 茶色
 いわなくていい
 会話してる 横目に
 過ぎ 扉 窓 開け放ち
 湿った風 迎え
 青臭い香りが 侘しげに
 いわないで
 ごめん
 って

 (色抜ける)神々の音階(はしる)

 不自由にも歪みきった表現で
 わだかまり と 言ってみる
 ただ思い出す無碍の後悔の連続 パターン シグナル 波
 あっ
 あのとき なんで ―――
 一際高くなる
 心がずぶ濡れで 助けなんて
 叫んだりなんて プライドで 出来ないで
 淵に沈んでいく もがく指先 あなた に 伸ばせないで
 喘いだ吐息から 淡い発光を すこし ね 期待している

 (返信など)解の無い方程式(なし)

 いちじかん
 も
 にじかんも
 何時間もずっと
 直訳できない謎の言語を
 海にこぼしながら泣く
 うきわを掴む
 バラバラな想い
 ビーチボールが泡になって島へと到着した
 ずっとずっと痛かった
 断絶されていた感覚を 橋を シームレスにつないで
 思い出を
 最初まで回帰
 渡っていく
  あなた 嘘つき 口だけの優しさ
  その瞳 真実無く 泣くのも計算
  腕を組み 他愛もなさ過ぎた会話
  出会った 運命と確信したときの
 渡りきり
 たしかに 存在していたと言えた
 もう
 積分できないほど
 儚くなった
 不安定の証明を
 うみへ
 数珠つなぎで
 手を放して
 漂う
 演算なし
 月 一筋 灯り
 消える 朝
 毛布にくるまりながら見つづける
 落ちはしない うきわがあるから