■ 21 ■
ペロリ
めくった裏側に
雪が
つ
もっていることを
僕は
もう知っている
ペシャリ
舐めた川岸の木に
君が
た
っていたことを
僕は
もう知っている
想像の中で君は
ペチリ
僕の
て
を叩いて
あっけなく崩れ落ちた滴は
雪の合間に落ち
て
ペタリ
地面
に
張り付くんだ
名前の頭文字が 「ふ」 だった
それは淡いグリーンの相を呈して
僕らの合間に
ふ
いた
■ 22 ■
ぎゅ
ぎゅ
ぎゅ
「ここで思いっきり倒れようよ」
ぎゅ
ぎゅ
ぎゅ
「積雪ニセンチメートルじゃ、死ぬよ」
ぎゅ
ぎゅ
ぎゅ
「 、 」
■ 23 ■
白夜、ささやかに降り積む雪の
土に根に
染み入りこんこんと濾過された
純真という名の
水が
溜まる
地下に
波紋
有限の反響音
ひとつの背骨が浮かび、泳ぐ
千か万かと伸び続ける
鍾乳石を横目において
息を
止める
唯一の行為が
同化のスイッチを
押し
ふいに
沈む
下降の重力
深い、底まで、
地球の心臓をめぐる、マグマの鼓動を抱く
上昇する
水温
わたし、が、
ほぐれ、
内臓の境界線は融けきり
同化する、指先には、
あたたかな泡が
雨のように湧きあがる、そして、
ほぐれ、
骨は、
しずかに、はなれ、
あたたかい、
ねつに、沈み、ほぐれ、
どうか、
わたし、は、
ほぐれ、
ねむる、ゆめ、
は、
■ 24 ■
誰のものでもない空
絶える事無く 雪の降る度に立ち止まる
冷たかった胸包んだかけら
失ってしまう
砕け散ってしまう
怖い
なのに、
一人寂しく笑ってた
閉ざされた世界 逃れられない曇り空
雪の降る度に立ち止まる
殺して
お願い
きらきら 浮いて
消えて消えて
■ 25 ■
それを降ることを止められるものなど誰一人として居なかった
いまは.
■ 26 ■
猿も手を出さない
うだるような暑さのコンゴ共和国にて
話題にものぼらない日本列島からFAXが届いた
【あなたが一番食べたい日本の食は何ですか?】
「あぁ……」
眩暈をおこしたような声をあげ
単身赴任していた北海道出身の主任のつぶやきを
私は
ききのがさなかった
「あぁ……雪が……食べたいぃ…」
故郷のあの
素晴らしい雪
を
冷凍パックにして詰めて持ってきてくれるとでもいうのだろうか
赤いジャケットの
笑える!
ボンバーな髪型のディレクターは、ハッ!!
「あぁ、はは、うーんそうだね。納豆、かな」
汗をかきながら主任は
嘘を
言った
■ 27 ■
ピヒ、ピヒ、
あの雪が枝からドサリと落ちたら死ぬんだわウフフ
ピヒ、ピヒ、
自分で決める自分の死ってどんな感じなのかしらウフフ
ピヒ、ピヒ、
きっと自分で決めたとほり苦しくなく逝けるんだわウフフ
ピヒ、ピ ヒ、
霊になって飛び出たらウフフ
ピ ヒ、ピ ヒ、
あのひとに挨拶したいわウフフ
ピ ヒ 、 ピ ヒ 、
愛してるってウフフ
ピ ヒ 、 ピ ヒ 、
言うのウフフ
ピ ヒ 、 ピ ヒ 、
ウフフ
ピ ヒ 、
ウ
■ 28 ■
君らはどこへ行くの
さむい さむい場所へ
行ってしまうんだね
僕らはどこへ行くの
あつい あつい場所へ
行ってしまうんだよ
彼等はどこへ行くの
ひどい ひどい場所へ
逝ってしまうんだね
氷雪はどこへ行くの
とおい とおい場所で
言ってしまうんだね
ユキ と
■ 29 ■
あなたの中の雪を掬う
わたしの中に雪が巣くう
あなたの中の雪を救う
わたしの中に雪が巣くう
あなたの心の檻を壊す
わたしの心に檻が乞わす
あなたの心の檻を恋わす
わたしの心に檻が乞わす
あなたの中の氷を掬う
わたしの中に氷が巣くう
あなたの中の氷を救う
わたしの中に氷が巣くう
あなたの舌の鳥を涸らす
わたしの舌に鳥が狩らす
あなたの舌の鳥を枯らす
わたしの舌に鳥が狩らす
あなたの中の水を掬う
わたしの中に水が巣くう
あなたの中の水を救う
わたしの中に水が巣くう
あな たの中の雪を掬う
わた しの中に雪が巣くう
あな たの中の雪を救う
わた しの中に雪が巣くう
そして穴 蛇の中の雪を掬う
そして腸 死の中に雪が巣くう
そして穴 蛇の中の雪を救う
そして腸 死の中に雪が巣くう
■ 30 ■
糸を持ち
夕闇のレディは
そうと息をふきかける
すると対岸に
ギョロクツとした眼の マーマンが
「雪です、雪ですぞオジョウサマ」
とたんに
醒めた
手をしたレディは
優雅な仕草で
変装を溶いた
雪で 溶いた
明るみに出た憎悪は
裏をかえしてみても
アイ の二文字は
書いて
いなかった
「雪です、雪ですぞオジョウサマ」
糸を切ることもたやすいが
何か
君は
勘違いしているんじゃあないのかい?
レディは意図を吐き出した
今度は
こっちの番 だ