■ 41 ■


 横に切って
 ザクザクと切って

 縦に噛んで
 さくさくと噛んで

 横にならって
 ピシピシとならって

 縦に吐いて
 ほろほろと吐いて

 横に切って
 ツキツキと切って

 縦に舞って
 ふらふらと舞って

 横を向いて
 チラチラと向いて

 縦に書いて
 さらさらと書いて


 横に曲げて
 縦に縦に切って

■ 42 ■


 僕の好きなヒトが
 よく眠れるように 静かに
 モルヒネを注入する

 とろけゆく自我はヒトを失い
 ようやく 僕は安心して
 出刃包丁で切りきざむ

 ヒトでも生き物でも
 興味もなくなったソレを
 煮込んで生ゴミに出す

 また招こう
 好きなヒトがいた方が
 よく眠れる

■ 43 ■


 泣くように抱きしめる
 そうか 腕は動かない

 滴っているバースデイソング
 律動は心地好くて

 眠りそうになる
 抱きしめたまま 腕は

 動かないのに
 切りそうになる 泣けば

■ 44 ■


 君の心の剣は 細くて折れそうだね
 横に薙いでみても 風すら生まないね

 確かに終わっていた 海辺へのキップを
 縦に切ろうと しない
 それは 本当に終わらせたいの

 白いサンダルついて 冷えた壜だけ持って
 中はなにもなくて 水すら生まないね

 あふれ出した感情を 鏡の向こうを
 縦に切ろうと しない
 それは 本当に動けないから

 夏が過ぎ
 鳥が飛んだ

 縦に切ったら
 なにかが
 変わるのかな

 確かに終わっていた 初恋のキップを
 縦に切ろうと しない
 それは 本当に動けないから

 確かに願っていた どうか褪めないで
 横に凪ごうと しても
 剣が 本当に折れそう

■ 45 ■


 みっともない砂塵用の
 マスクをつけた旅人は

 足跡を 消され
 声を 消され

 息 消され

 消され


 消されて
 たどりついた

 オアシスは 幻想

 惑わされ ルテナンカ
 君はもういない

■ 46 ■


 美しすぎて壊した(1)

 ああ見えて(2)憶病なんだ

 そゆる(3)ススキ

 恋(4)っていつでも反作用


(1)破壊衝動が欠陥品に対して起こるものであるなら、人間は殺し合わなくてはならない。革命で壊されるのはいつでも美しい寺院や銅像だった。ぼくらは完璧に嫉妬する。
(2)レッテルは他人にしか貼れない。そうでなくとも感覚の共有など人間同士ではまずありえないのだから、認識のズレ。普段は気が強いというレッテル、臆病な行動に見えるという認識のズレ。
(3)そよぐ、そよる、そそぐ、萌える、萌ゆる、そゆる。
(4)恋はリビドー。とかいう一般的な世論。なにかにつけて反発したがってるだけだろう、君。

■ 47 ■


 幸せすぎて涙が出るの

 と
 君は言った

 そしてその言葉が

 そのまま 君との境界線になった


 なぜだろう

 境界線の向こうから

 泣き声が
 きこえる

■ 48 ■


 僕という自我の存在
 彼らの言い分
 彼女の自傷行為
 をとなりで見ている僕

 ずっと苦しんできた
 もういいだろう
 死なせてやらうよ

 人形のような笑いを
 指摘されたのはいつだっけ

 にらまれて 息ができない
 君の一言が ぼくをつきさす
 涙があふれる とまらない
 ウデの痛み
 ムネの痛み
 視界がぼやける
 君の 顔が 見えない 見れない……

■ 49 ■


 なぜ雨が縦に切るようなのか
 ずっと 氷るようだった

 秋がそぞり寄った夕暮れの中
 落ちた手を 一緒に探したね

 しまいに粉をふるって
 シュウリンはやってきた

 書き連ね意味がわからない
 理由すら 伝わらないというのなら
 ハサミで 白いハサミで影を

 薄く明けて切り落とす

 なんだったのか
 もう 夢を見るみたいだね

■ 50 ■


 縦に

 変わった


 切ろうとしなくなった
 君は変われるか君は変わっては居ないだろう君が変わっていること
 を

 望んでいる

 人間に
 横を望んでいる


 変わった


 続かないというのに