■ 21 ■


  金色

    消失していく遊覧船

  青色

    不知火はしってる?


  肺色

    緑に沈んで


  木色


    枯れた


    ざくじつもほんじつもらいじつも昼です
    預言書? あぁ 船に置きっぱでした。

■ 22 ■


 花火がおちる
 熱帯夜に足あとを

 ウンウンと肯きながら暴走族が窓を振動させる
 そうだ
 彼らは
 焼けつくようなプラスが欲しいんだ

 花火が
 目の前からおちてゆく

 カラハラと鎔けながら頭の上を消炎が通り過ぎる
 なにか
 夜空は

 あそこまで昇ったら冷たい風があって
 なにものにも
 マイナスされずに
 生きてゆくことができそうな気がしてならないんだ

 それは散るということ

 いつまでも上を見ていると
 星が鎔けそうな気がしてならないんだ

■ 23 ■


 ナイル的には


 ハーバードで消えた風を予測し
 徳用の
 ミルクを買いだめすることに熱中するとしよう


 パーの

 0パーの
 成分分析率がひっくりがえったら


 一枚残った葉っぱじゃ
 命は救えないと解るだろう


 おととい

 CMでやっていたジャッカルの葬式で


 泣いていた女が
 急に
 泣いていた女が



 この世の秩序に見えた

■ 24 ■


 真夜中に目が覚めるふうに
 くさびらの傷さえとけてしまった

 まだ
 こんなになったあなたをも
 あいせるといいきかせて

■ 25 ■


 あなたのマッチをコートから取り出し、死を盗んだのは私でした。

  「 どうしてこんなことに…… 」


 あなたはライターを持っていたのです。

 焼死体の前で愛をささやけるなら、
 顔がなくても誰でも、まさかあなたでなくとも。

■ 26 ■


 タヒチから遠く離れて
 私はこの街へ着た
 空は青く
 一筋の飛行機雲を残す
 私は生きている
 勘だって捨てたもんじゃない
 私には
 貴腐の芳香はまだ似合わないから
 まにあわせに
 貴女の玄関のインターフォンを押しつけた
 私は生きている
 だって捨てたもんじゃない
 やたらと
 綺麗に染まった腐りかたが
 そんなに
 憎たらしく感じたとしても
 綺麗に染まった陽は


 だれにも

 そしらぬ顔をする術を知っている

■ 27 ■


 DVDに映っていた
 あの雲は
 偽物のセル画

 イドを抱いて眠れない夜に
 絶やさなかった森に
 ひとつ
 降ったのは
 踊ったのは

 心の不協和音が奏でた
 あの雪と
 踊ろう あぁ踊ろう

 タイヤの痕をなぞって
 キュルリと注ぐリキュール
 ひとつ
 注文してショット

 刃物を滑らせて

 ここだけ
 縦に切って

■ 28 ■


 懺悔して

 今夜だけは 研究に足るような月だから

 ゆびを
 明け色にからめて

 後悔して

 そんなになっても許されると 信じて

 切った髪を
 夜空に放り投げると美しいという迷信がありました

 さんざん
 言ったのに

 月がのぼったから また今度

■ 29 ■


 なぜ?
 いのり 羽ばたく秘め事
 ふき入れる
 はるは 君を切るんだね


 __親愛なるジョー・メテルニッヒ

 なおこの手紙は__45秒後に飛ぶ


 そこには地球壜がある
 赤々と熱せられた硝子は穴のあいた鉄の棒にカラメトラレ
 息を慎重に押しこめると回りながら咲きはじめる
 直径は
 手のひらを一杯に開いて きみ
 左親指と左薬指と右薬指と右親指をつなげたくらいの円
 ナイフで切れ目をキィヒ引き
 カンと叩けば地球の
 そうだな……約ジュウブンノイチは炉に消える

 「これ」
 「えっ?」

 「これ、私が吹いたビンだ」


 「飛ぶの?」
 「えっ?」

 「便箋は飛ぶの?」


 はるは 羽ばたく風ごと
 なぜ?
 は知ってしまわないのだ 飛ぶなんて

 さあ
 クブンノジュウくらいの地球に
 のっておいでよ


 __パタ__パラ_パラ__パタパタパ

 あ
 待って下さい 切ります
 春 要らないです 地球も

 「これ」

 「え?」
 「スペアあるし」

■ 30 ■


 横に割らなきゃ良かった

 私があなたを忘れたくて
 横に倒したの。

 縦につぶせば良かった
 でも切りたくはないの