■ 1 ■


 死にたい

 突然死にたくなった
 ぼくはどうしていつもこうなんだろう
 手首を切る明確なビジョンがよぎる
 陳腐だ
 面倒くさい
 なにもかもが腐(くさ)い

■ 2 ■


 また 手首を 切り刻んでは君を 呼び出す
 血の臭いに誘われてドアを叩く
 花束を持って

 また 貴方でしたか懲りない男ね 死ねばいい
 そんなお決まりの罵りも快感に変わっていくから
 咲き乱れる紫色

 もう起きて
 十字架の下で土の下で 嗤って?
 疲れ果てた手の指先から脳髄に達してた

 ぐちゃぐちゃに なりながら
 二人はまだ続ける
 何の成果も生まない 君を 死体を愛していた

 また 死なない 程度にまで傷をつけ始める
 お茶会のお誘いをしようかロシアンティーのようにほら
 赤が混じる美味しい紅茶を

 もう起きて
 墓石の下で花の下で お願い
 気持ちも果て狂い始めるのはいつからにしようか?

 ぐちゃぐちゃに なりながら
 夢ごこちの楽園
 まだどこにも逝かないで 一生 愛していた証拠

(あぁ、バカね。紫色、皮膚はだんだんと緑色。でも、ねえ。私、)

 もう起きて
 十字架の下で土の下で 嗤って?
 疲れ果てた手の指先から脳髄に達してた

 ぐちゃぐちゃに なりながら
 二人はまだ続ける
 何の成果も生まない 君を 死体を愛していた

■ 3 ■


 あなた、いま、切りましたね?しかたのない人だ。てんでなっちゃいない。いつだったか、ままごと遊びのように、すきと囁き続けた日々が懐かしい。ずうと言おうと思っていたのですが……、っあれは! とうぜん幼い頃の錯覚であってまさか今でもなんてご冗談を、


 あ なた、
 い ま、切りましたね?
 し かたのない人だ。
 て んでなっちゃいない。
 い つだったか、
 ま まごと遊びのように、
 す きと囁き続けた日々が懐かしい。
 ず うと言おうと思っていたのですが……、
 っ あれは!
 と うぜん幼い頃の錯覚であってまさか今でもなんてご冗談を、

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  ↓
  あなた、いま、切りましたね?

■ 4 ■


 A  「いや……いやよ! 切りたくないの!」

 少女A ここで包丁の先を少年Kに向ける
 少年K 大げさに肩を落とす ※小刻みにふるえながら

 K 「縦に、だよ」

 少年K 上手に一歩右足をずらす
 (照明 教会の偶像にライトを当てる)

 K  「一瞬で死んでみせるから。一瞬ぢゃない時は、一瞬の演技をしてあげー…」
 A 「やめて!」

 (暗転 間)

 K 「彼女は罪を犯したのです。クロスを、横から切っても変わら
    ないというのに」

■ 5 ■


「しあさっての講義でキザミかたなんてやるンだ、  冷やすといいらしいよ」

■ 6 ■


 縦に切ろうとしない為に キスを受けた
 あの罪さえ踏みつけ に 縛られた海から

 振り返りも   せ ず に

 砂は踊る 波は
 高く舞い散る
 あの記憶も踏みつけ に 浮かんでは溺れる

 繰り返して 『死に**』


 縦に切ろうとしない為に 目をふさいで
 あの貝がら踏みつけ に 足うらの赤など

 振り返りも   せ ず に

 裾を返す 波は
 高く舞い散る
 あの記憶も踏みつけ に 沈んでは足掻いた

 繰り返して 『生き**』

 縦に切ろうとしない為に キスを受けた
 あの罪さえ踏みつけ に 縛られた海から

 繰り返して   逝 き *

■ 7 ■


 愛しさを 感じるたびにたおれてしまう
 だから最近 貧血気味だ

■ 8 ■


 すばらしさすがにクレイジー!


 あの日のうでからブラフマン、


 まっかな過去ともオサラバサ!

■ 9 ■


 君、
 ねぇリストカットしたの。

 縦に切らないんだね。
 それ、
 赤ちゃんの泣き声だね。


 君、
 ひさしぶりだね、リストカットしなくなったの。

 赤ちゃんは卒業したんだ?
 一方通行で叫ぶの 卒業したんだ?


 さあ腕をだして。
 オメデトウ、プレゼントだよ。

■ 10 ■


 そうして縦に切って死んだのでありました
 めでたし
 めでたし


   …彼女の願いは届かなかったんでしょうか……