■ 1 ■
風が吹かなければいい
雨が降らなければいい
日が射さなければいい 地が動かなければいい
食事をしなければいい 運動をしなければいい
歌を 歌わなければいい
指を震わせなければ 小鳥が動かなければ
風が吹かなければ
痛く ないのに な ぁ
ワガママな千年王は今 石の柩に入って
動かない 痛くない
風が吹かなければいい
雨が降らなければいい
日が射さなければいい 地が動かなければいい
食事をしなければいい 運動をしなければいい
歌を 歌わなければいい
指を震わせなければ 小鳥が動かなければ
風が吹かなければ
痛く ないのに な ぁ
ワガママな千年王は今 石の柩に入って
動かない 痛くない
さあワタシは逃げ出した
どこへともやらぬ風の奥に
ゆれては蠢く足の多きことよ
連弾の紙は破り
踏みつけ
まだしも
燃やし
ぬらし
責めたて
――呆れ行く所業!
つるし上げたチェンバロの中に
夢が詰まっているとでも思っているのか
懐かしさに目を背けた。
千年王のブロンズ像は今も、眉をひそめて私を疑問視している。
白昼夢で見た王国の
玉座は弦に
王女は鶴に
しろく
ひからび
旅人は
塗りつぶされた緑青に座りながら
頭を切り開け水平線を取り出した
明けの
水という楔は
生きることに似ていて
閉じた後に
王様は弦に
紹鴎は吊るし
はばたいたしろは塗りつぶして
しろは
塗りつぶして
また
塗りつぶして
塗りつぶして
執拗なカンジで
ラルシャンテ
君は
おかしなことを たまに言うね
真昼の
千年蝶の
砂漠になってしまうエデンで羽ばたきをした
影
なんでも
云えるものだと信じて いたのに
ラルシャンテ
何も
言わない
まばたきすらしない 母さんが
夕焼けを合図にして動き出したときの恐怖
寝棺に横たわった
ミイラが発見された
おそらく
夜からも
はがれないだろう
鎖切って
じくじくと 腐りきって
「
ぼくはあなたの人形です。
もうなにも考えず、もう なにも、
見なくていイ
」
腐り切って
じくしくと 刺しあって 続けて
慰め合った日々に停止状態の草が笑った。ぼくはあの人形を心のどこかで嗤っている。けれどそれは幻想で、鏡に反射した人形は、たしかに唇とおなじ月夜に飛ぶ。
消えた四肢もシャシャリ
鎖の音は どこもかしこも
「棺が、С― もう、なにも、かも」
腐りきっている
まっかな頬 まっかな口 まっかな鼻
まっかな瞳
まっかな髪 まっかな服 まっかな耳
まっかな靴
まっかな肢体 まっかな死体
まっかな屍体
まっかなアールユノイセント
まっかな空 まっかな地 まっかな木
まっかな人
まっかな世界 まっかな地球
まっかな宇宙
まっかなシャーデンフロイデ
レイラ、わたし、少し、眠いの。
わたしを笑って。
わたし、不幸よ。
君と一緒に動いた。
君は まるで 世界に閉ざされたようだった。
君と一緒に止まった。
君は まるで 世界に閉ざされたようだった。
ずいぶんたってから僕は、
まるで 世界にとざされたように動けなくなった。
君は まるで 開かれたネバーランドに手招きされている
ように踊った。
そうか。
僕は大人だったのか。
うろたえていた
もう大人になってしまうのかと
うろたえて
いた
ひざしの中にうつった
ダレともしらない千年王の目に なみだが たれ る
るう ら
る うぴ くら ん か つ
あ
あせっていた
もう子人には もどれないのかと
私のために傷つくあなたの、なんて素敵なことでしょう!
あぁ千年王、こんなになった今でも
私はあなたを傷つけたくてたまらない。
こんなになった今でも。