■ 31 ■
舞い踊る あかね色の草
遊びもおしまい5時の曲
遊具も
今は笑ってみえる
ささやかに褪せて
どこにでも居ていいよね
子供ってさ
温度をあげるよ
バイバーイ バイバーイ
手をつなぎ帰る親子
追い越す 自転車の小学生
沈みきるのを見ている
老人
曲の終りを聞いている
犬
この暮れを
しおりに
パタンと閉じた
舞い踊る あかね色の草
遊びもおしまい5時の曲
遊具も
今は笑ってみえる
ささやかに褪せて
どこにでも居ていいよね
子供ってさ
温度をあげるよ
バイバーイ バイバーイ
手をつなぎ帰る親子
追い越す 自転車の小学生
沈みきるのを見ている
老人
曲の終りを聞いている
犬
この暮れを
しおりに
パタンと閉じた
素足を鳴らして
踊れ
踊れ
踏まれた樽の
紫蘇も
踊れ
素足は濡れて
シャラリ
ナラリ
追加の紫蘇も
ファサリ
沈め
手拍子たたき
踊れ
踊れ
いつしか紫蘇は
消えて
冷えて
硝子の壜に
注げ
注げ
乾杯の音を
鳴らせ
鳴らせ
沈む夕日よ
照らせ
樽を
踊り続ける
素足を
紫蘇を
だれもが死んだ教室の
外でヤマビセが鳴いている
ほんとうは
僕が一番だったのに
優しい嘘つきばかりが閉じる
校庭に
ぽとりとヤマビセが落ちて
まだきっとあたたかいのに
もう
走りたくもない
コルクの葉を 十九才の栞にはさみ
日より浜へ
日よりの山へ
千の砂より
蟹の子ら出で
なつき うなずき 泡飛ばす
陽が暮れはてた
水平線の
とけきる船は 遠くの友を
鳥の笛から
報せをうけて
宿に戻れ 木々の寝床へ
日よりの浜にて
日より 山にて
いつかの栞を 取り出す日まで
いま
残骸を背に
暮れてゆく砂浜をかけていく
美しかったと海底のあたりに目を入れて
遊びたかったと緑の泡を口に入れた
淋しかったと抑えつけ
簡単だったと 沈んだ
なにもかもが夢のように積み重なる
残骸だらけの思想は夜にも白にもなれずただ
消えることだけ
簡単だった
ガラス森の奥へ 裸足のミサンガ
今はまわり 続け
スカート純白が 落日の影を
通りすぎた 軽く
ま だ 祝福は 待ちわびた月を 追い
ま だ 新緑は くちづける花を
指
に 夜の声
ねむりなさい
ガラス森の奥に 裸足のミサンガ
今は褪せて ほどけ
ボーンの純白が 朝日の光を
静かすぎた 軽く
も う 祝福は くちづけは夢を 飛び
も う 紅葉は 待ちわびた冬を
葉
に 雪の色
しずみなさい
揺れた枝に 六花咲く
ガラス森の 奥
誰も知らず 六花咲く
静かすぎた 軽く
五時の音楽が流れる
秋色の教室に
少女だけがまだ
座っていた
はやくかえらなくちゃ
立ち上がった椅子は
ああたかく
くぼんでいる
さようなら 先生
冷えていく
窓の外
金魚がいっぴき泳いでく
細く
真っ赤な
駆けていく姿を
沈む教室からまだ
いつまでも眺めていた
真冬の部屋で遺書を書いた
ストーブの灯油が切れた
寒かったのでコートを着た
外は黒くてそして白かった
雪だとつぶやいた
それから遺書を封筒に入れた
あっというまに窓が曇った
ひとしきり泣いた後で
死ぬのがバカらしくなった
落日が集積場の鬱蒼と茂る家電製品に柔肌を与へる
青白ひ廃墟の亡霊として月が密やかに羨望を注げる程に美しく
草臥れ死に損なっておる銀白色のブロウチが
思春期を期待する銀の柔肌を湛えた少女と為りて
斜陽の赤をまとい
靴音を軽やかに鳴らし孤独の集積場を駆けまわる
探しておる猫は
或る朝顔の燃えゆ夏の午後二時に
影を失くし
何処へとも知れぬといふのに
青白ひ夜霧の支配を無言で受け入れ眠る集積場にて
老紳士が打ち捨てた鼈甲ステツキの先端に足首から脱いだ
赤い靴をかけ
少女は柔肌を失くす
月と倒れた地点にて
枯らした
どろみず
夕焼けの雲が羽になって
ジョウロがひどく くすんで見えたね
じいじとばあばと
誰もいなかった畑で
紫蘇の葉をちぎっては きたないカゴに 放り投げたよ
サンダルの糸がほつれていった
倒れた木造の家屋にはひとつも 手を 触れられなかった
たたんで
青虫
暗くなっていく作業場の電気は いつも ばあばがつける係だった
いつも笑っていたはずなのに
音が
ない
用意された食事 指先から上が夜