■ 1 ■
きみを噛んだ
律動
甘いんだね。すごく
きみを噛んだ
律動
甘いんだね。すごく
ふっくらしていて甘いもの
ぷかぷか浮かんで雲のうえ
たっぷり 息を吸いこんで
ねえ!
大好き!
って 言ってみる
ふるふる動いておさえられない
ぶわっとあふれる この気持ち
きみは
笑顔で
世界でいちばん甘い笑顔で
なんて返してくれるのかな
君と二人
手をつなぎ歩く
公園の並木道
紅葉した銀杏が
はらはら
めいいっぱいの
祝福をくれるから
くすぐったくて
笑いあう時間
君は唄った
リラリラと笑った
夕暮れの皿が沈む
そういう色に限って
許すの やめてほしい
リ ラ
鈴が鳴った
君と一緒に
星が揺れた もう泣かない
花びら一片 ひらら
彼女が降らせる ひらら
健康的にまるまる太った
彼女のまわりに花が降る
時々ぼうっと窓を見る
横顔にそっとかぶる一片 ひらら
恋しているんだ
叶わない恋を
ひらら 彼女の熱量が
花びら降らせる ひらら
見つめ続ける
ただ 静かに
それだけでいいらしいね ひらら
健気な彼女を眺めている
僕の頬には
銀杏の葉が ひらら
落ち続けているといいうのに
キラキラかがやく星空を
屋上から二人で見ていた
「あっ、流れ星!」
喜ぶ顔
どこまでも幸せそうな彼女に嫉妬して
「……きっとすぐ消え去るんだ」
なのに、笑顔で
「また流れるよ。一緒にお願いしよう?」
暗い
屋上で
彼女は
光って
「ねぇ、一緒に、笑おう?」
君の喜ぶ顔って
銀色だ
空もますます星が輝いていて
流れ星が
僕の
壊れそうになった心に愛情が
君の喜びが
全部一緒になって着地する
秘密裏に行われたゲームは
動く米粒を増殖させて惑星を覆いつくす
と
いうものでした
私は後手で
増殖を促進させるために権力者には一夫多妻制を制定
米粒はすぐに枯れるので
長く白くもたせるために
拠りどころとなる宗教をいくつか制定
「お、やるね」
彼は先手で
既に
このゲームの最大の核である
いくつかの米粒消滅イベントを華麗にすり抜けていたので
更なる増殖を促進させるために
あえて戦争の種を植える
海を隔てた場所へ米粒を数粒移動
別な米粒が海を渡れるように笹舟を用意
「あ、その手がありましたか」
気持ち悪いほど増殖した米粒を
気まぐれにつまみあげて眺める
だれかが神隠しだと叫んでいる
指が同じ白をたたく
これはすべて上書きのピアノ
指が違う黒をねらう
それもすべて上書きのピアノ
指が君の紅をなぞる
あれはすべて下書きのノート
指が髪の影をすくう
どれもすべて下書きのノート
君の声が青をよんで
これはすべて上書きのベッド
僕の息が水をふくむ
それもすべて上書きのベッド
君の足が肌をよせて
あれはすべて下書きのカット
僕の首が光をひいて
どれもすべて下書きのカット
朝がまた来てピアノの音に
耳をすませば君は鍵盤の
埃をとって
消さないで
上書きはやめよう?
不思議がお
可愛い
スキ
君が僕の頬にキスして
どれもすべて ひとつだけのコール
あすこに光る ドロップが見える
そういえばキミは プラネタリウムが好きだったね
違うよ リノリウムの話
その足かせを噛み千切って
逃げてみても いいけれど
ねぇ折角スコーンを焼いたんだ
今しばらく
着席していてはくれまいか
そういえばキミは 金色のライオンが好きだったね
違うよ 銀のさかなは空だよ
太った彼女が言った。
「宇宙人は未来人だと思うのよね」
僕は本から目をはなさない。
「ほう、」
「宇宙人が居るとしてだよ仮説。わざわざこんな辺鄙なとこまで何回も来ないでしょ? 未来人がタイムマシンで来たって方が何倍も信憑性あるよね」
「ほう、」
「グレイの口だってさ、今でさえやわらかい食べ物が多いから、顎が退化したんだよで、さらうのも、遺伝子を取って未来をどうにかしようってこと」
「ほう、」
僕は本から目をはなさない。
「君は栄養取らなさすぎ。グレイになっちゃうよ」
「それは……聞き捨てならないですね」
僕はようやく本から目をはなした。
雨が降っていた。