■ 又、双人ハ ■


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■ 62 ■

 僕たちは
 海と空しか見えない空間にひとつだけ伸びる
 錆びた線路を歩いていた。

 海は凪いで、
 空は快晴。

 海底と宇宙はわからない。

 見えないものはいつだってわからない。声を出さないのは死んでいるのと同じだ。無言のそぶりでわかった気になっているのは加害妄想者だけだ。

 線路は延々と続いていた。
 隣には誰もいなかった。

 僕たちは歩いている。
 けれど隣には誰もいなかった。

 歩きながら、右も左も前も後ろも確認した。


 誰もいなかった。

 そして
 その間、僕たちは無言だった。


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 「ワタクシは二人」
 「ボクは、ふたり」

 「家の中で飼いならされた小鳥」
 「家の中で飼い殺された、番犬」

 「傷がつかないように」
 「傷をつけられるよう」

 「やさしく」
 「きびしく」

 「そして」
 「そして」

 「きびしく」
 「やさしく」

 「まうしろには」
 「ボクの前には」

 「血をわけたあなた」
 「血が同じご主人様」

 「いもうと」
 「この人を」

 「ワタクシはこのいもうとを」
 「いけないことだと、解って」

 「愛しているのです」
 「触れたいと、願う」

 「たとえそれで、地獄に落ちたとしても」
 「たとえそれが犯された領域だとしても」

 「きっと」
 「たぶん」

 「あなたがきっと助けれくれるわ。手をひいて、キスして、そして」
 「抗うことなどできない。その手も、その唇も、ボクを閉じ込めて」

 「あぁ、美しい」
 「なんて、汚い」

 「ワタクシは美しい」
 「ボクはとても醜い」

 「その同じ顔のいもうとを、ワタクシは愛しているのです」
 「いつかこの手で絞め殺してしまいそうだ……。ねえさん」

 「嬉しいことに」
 「皮肉なことに」

 「今日は」
 「今日は」

 「とても晴れて」
 「とても晴れて」

 「ワタクシの後ろには」
 「ボクの目のまえには」

 「あなたが居ますわ」
 「ねえさんが座って」

 「あぁ、」
 「あぁ、」

 「きっとこれを愛というのですわ……」
 「……これはアイなんてもんじゃない」


■ 64 ■

 好き
 と
 一日10回言うことで

 きみ
 を
 好きになると思ってた

 今年
 で
 十年つづけてきたのに

 きみ
 を
 好きになれない
 何故
 か
 分からない

 本当
 に

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 太った彼女が言った。
 「宇宙人は未来人だと思うのよね」

 僕は本から目をはなさない。
 「ほう、」

 「宇宙人が居るとしてだよ仮説。わざわざこんな辺鄙なとこまで何回も来ないでしょ? 未来人がタイムマシンで来たって方が何倍も信憑性あるよね」

 「ほう、」

 「グレイの口だってさ、今でさえやわらかい食べ物が多いから、顎が退化したんだよで、さらうのも、遺伝子を取って未来をどうにかしようってこと」

 「ほう、」
 僕は本から目をはなさない。

 「君は栄養取らなさすぎ。グレイになっちゃうよ」

 「それは……聞き捨てならないですね」
 僕はようやく本から目をはなした。
 雨が降っていた。


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--Presentation by ko-ka--