■ 又、双人ハ ■


■ 51 ■

 この風が やむまで
 君と二人がイイの
 真白なドアを開け放ったら
 ココに おいで

 二人が 出逢って
 恋いに堕ちて別れる
 今までのコトを語り合って
 そして
「答え」は間違いじゃないから

 幸せに生きてゆこう
 これからは
 一人で
 風がやむ

 さよなら

 この雨が やむまで
 彼と二人がイイの
 真白な傘を空に向けたら
 ココに おいで

 二人が いままで
 どんな風に過ごした
 今までのコトを語り合って
 そして
「別れ」は悲しくなんかない

 幸せに生きてゆこう
 これからは
 一人で
 雨がやむ

 ありがと


■ 52 ■



■ 53 ■ 溺死体 ■

 きみのうでが

 そうっとのびて


 笑顔で

 くびをしめる


 あぁ

 そうさ


 きみはぼくを愛していて
 ぼくはわらっておちる


■ 54 ■

 こぼれおちた文
 白の便箋
 たおれる花言葉よ
 日射しの貝殻
 とけてゆく記憶
 あざやかな落日さえ


 走る小道の先には
 無人のベンチとバス停
 腰かけているのは
 真昼の影だけ
 幾千の足音を
 聞いてきたことだろう
 その中のひとつが
 君と僕だろう

 とどかない雲に手を伸ばして
 あの下に降る雨のしずく
 喉に映した


 かすれた消印
 途切れた住所
 はがれる鳥の切手
 魚の目をした
 丸い句読点
 夏の終わりを告げる

 つめたい海の色


 どこまでが希望で
 どこからが絶望か
 考えまとまらず
 降りるボタンを押す

 カーテンゆれる暑い病室で
 夕立ちを眺めたくないと
 窓を閉め切る


 君が

 言いかけた覚悟
 塞ぐくちびる
 なみうつ布のあいだ
 それでも瞳を
 そらさないでくれ
 かがやく涙の星

 素肌流れる河


 こうして二人で居られる記憶
 あの頃無邪気に遊べた記憶
 もしもの時にはきっと隣に
 いると思える心の記憶


 こぼれおちた文
 白の便箋
 たおれる花言葉よ
 かすれた消印
 途切れた住所
 はがれる鳥の切手

『忘れないでいて、私のことを。』
 空の向こうに走った
 白い月のうら
 きっと届くと
 手を伸ばす遠くまで

 触れるほど
 痛い


■ 55 ■

 行けない。
 会えない。
 向こう側の向こう側は表じゃない。
 こちら側のこちらは確かに表だよ。
 だから
 きみは
 数かぎりなくスクエット。
 そうだ死のうとしているね。
 すこしも
 くるしく
 なく
 いたくも
 なく
 これから行こうと思うんだ。
 四時半に駅の南口での大きな柱の
 そこで
 きみは
 柱に首をただ天井にむけて。
 そうして死のうとしているね?
 でんしの
 てがみを
 可能なかぎりスクワット。
 可憐なかおからクワイエット。
 てんしの
 かがみを
 掲げつくしたのはきみだ。
 それを壊すのはほんとうは。
 行きたい。
 会えない。
 愛なんてバカバカしいもんじゃない。
 電波信号を捉えるその眼球ごと。
 きみを
 ころすのは
 きみを
 ころすのは
 ぼくだ。
 廃墟のような丸い部屋がプレジデント。
 生に反旗をひるがえしたジプシーエンド。
 顔も。
 知らない。
 名も。
 解らない。
 010010101110111。
 001000001111010。


■ 56 ■



■ 57 ■

 親愛なる(――検閲――)

 島の様子が変わりないことをきいてまずはホッとしております。
 反政府軍の(――検閲――)が昨日わたしの所を訪れ、私は久々に(――検閲――)などを(――検閲――)し、このメイルを貴女に書いております。
 私の方はというと、検閲にかからない程度に申しますが、ずいぶん耳が悪くなったように思います。年のせいでしょうか……、いや皮肉です。貴女ならご理解いただけるでしょう。
 貴女からの手紙を受け取ってからというもの、私は昔暮らした時の島の様子をよく夢に見るようになりました。
 (――検閲――)の(――検閲――)を食べたり、(――検閲――)から取った(――検閲――)を(――検閲――)に向かって(――検閲――)たり、夢の中では子供の姿で、もちろんのこと貴女も子供の姿で現れます。
 よく私の後を控えめについてきて……。懐かしいです。
 報道紙の(――検閲――)によると、(――検閲――)は益々、(――検閲――)(――検閲――)だそうで、島までは届かないでしょうが心配になります。
 貴女がた島に住む人々の生活が変わらないことだけが、私の願いです。といっても、インターネットの線がついにひかれたのですよね。ということは、電気も、コンピュータもある……あの頃とかけ離れた島の様子など、私には想像がつきません。
 そうそう、このメイルは(――検閲――)が送って下さるとの事で、(――検閲――)には本当に頭が下がります。
 もしこのメイルを貴女が受け取っても、送信元への返信はしないでください。絶対に。運がよければ(――検閲――)を通して私のもとへ届くでしょうが、確率は(――検閲――)といったところです。
 手紙のほうがまだ届きます。
 貴女の文面から察するに、確率は(――検閲――)といったところでしょうが……。
 とにかく、私はまだ生きているようです。
 (――検閲――)が(――検閲――)に(――検閲――)されると分かりませんが、今のところは。
 私が貴女の手紙でホッとしたように、貴女も私からの返事でホッとしてくださる事を願って。


               (――検閲――)より愛をこめて


■ 58 ■

 地上は炭酸水で
 はじけて浮かんだ人間が
 夜空の上澄みに光る

  そうなんですか?
  星は炭酸の泡なんですか?
  私なら燃やします

 太陽はチリチリで
 死ぬ寸前に散らした子供が
 夜空のそこかしこで呻く

  そうなんですか?
  星は子孫で残滓なんですか?
  私なら泣かせます

 反論はバチバチで
 実をいうと毎日採取して
 夜空の画用紙に画鋲している

  そうなんですか?
 そうなんです

  星は邂逅の記憶なんですか?
 少なくとも今は

  私なら食べさせます
 口をあけて

  食中毒になればいいんです
 はじけて浮かぶ


■ 59 ■

 あすこに光る ドロップが見える
 そういえばキミは プラネタリウムが好きだったね
 違うよ リノリウムの話

 その足かせを噛み千切って
 逃げてみても いいけれど

 ねぇ折角スコーンを焼いたんだ
 今しばらく
 着席していてはくれまいか


 そういえばキミは 金色のライオンが好きだったね

 違うよ 銀のさかなは空だよ


■ 60 ■

 「ねぇ、ロリンコじゃないよ」



 そうだったそうだった
 ロンリコ、ロンリコ




--Presentation by ko-ka--