■ 又、双人ハ ■


■ 41 ■

 君がひとつめの扉を開けたときに僕は言った
 もう戻れないなんて嘘だと証明してくれ
  ・
 君は僕にキスを投げた弧を描いて池に落ちた
 もう拾う力さえなく泣き崩れる彼岸に
  ・
 君がふたつめの扉を開けたときに僕は言った
 いつか必ず会えると信じさせて死なせてと
  ・
 君はいい笑顔を向けた僕は無理矢理手を振った
 本当は理解したはずの足掻きに似ていた恋


■ 42 ■

 投げ出す足と 場違いなニュース
 そんなに言うと 剥がれるよルージュ

 泣きそう……君が消えそうな気がして
 まただ 足りないよ

 君を抱きしめて ささやく言葉も
 消えないでいてね

 ずっと もっと ぎゅっと
 していいかい?

 確かな感覚 君が居ることを
 胸に伝えて 僕と居ることを
 君を抱きしめて ささやく言葉も
 消えないでいてね


■ 43 ■

 ロウソクを吹けば白い煙がたちのぼる
 喪服を脱いでけれど時間は止まったまま
 菊の花を活けて帰るだけの義理の両親
 いつの間にか僕はまた君の記憶を

 真昼の道路に車と自転車がころがり
 信号機は嘘のようにチカチカ光ふりそそぎ
 僕の腕の中で血を吐き冷えてゆく
 美しすぎる冬

 淫らな妄想で君の遺影を白で汚して
 痺れる指先は君が最後に口づけをした場所

 夜が怖い

 よく来ては手を合わせる彼女の女友達
 「前を向きなよ」ってやけに簡単に言うから

 落ち込むフリして肩に手をかけさせてみる
 昨日夢に彼女が出て「お似合いだから」と笑った……
 なんて嘘に騙されている上気する頬
 そっと押さえて

 激しく腰を振り君のあえぎ声が思い出せない
 唇かみ締めてどこまで堕ちれば君に逢えるの?

 月が沈む

 涙が枯れたら後追いするんじゃないかと
 思われている程には君を好きだったらしいね
 僕の腕の中で愛をとなえ閉じる目

 もうどうしようもない

 淫らな妄想で君の遺影を白で汚して
 痺れる指先が誰もいないとなりを彷徨う
 見つめてささやいて君の仕草を肌で感じて
 唇かみ締めてこのまま眠れば君に逢えるの?

 夜が明ける
 生きる春が怖い


■ 44 ■

 LoVe&PeaCe−LoVe
 ラブ・アンド・ピース
 君が最期に言ったこの単語を俺は一生忘れない
 血を吐きながら笑った顔を、俺は一生忘れない
 涙の乾いた悲しさも
 土で黒く染め上げた手も
 ぬけきった青い空も忘れることはない
 忘れない
 忘れない

 ―過去

 LoVe&PeaCe−&
 ラブ・アンド・ピース
 昨日この単語を忘れなかったか?
 明日この単語を覚えていれるか?

 ―未来

 LoVe&PeaCe−PeaCe
 ラブ・アンド・ピース
 君が最期に言ったこの単語を俺は一生覚えている
 血を吐きながら笑った顔を、俺は一生覚えている


■ 45 ■

 指が同じ白をたたく
  これはすべて上書きのピアノ

 指が違う黒をねらう
  それもすべて上書きのピアノ


 指が君の紅をなぞる
  あれはすべて下書きのノート

 指が髪の影をすくう
  どれもすべて下書きのノート


 君の声が青をよんで
  これはすべて上書きのベッド

 僕の息が水をふくむ
  それもすべて上書きのベッド


 君の足が肌をよせて
  あれはすべて下書きのカット

 僕の首が光をひいて
  どれもすべて下書きのカット


 朝がまた来てピアノの音に

  耳をすませば君は鍵盤の

 埃をとって

  消さないで

 上書きはやめよう?

  不思議がお

 可愛い


  スキ


 君が僕の頬にキスして
  どれもすべて ひとつだけのコール


■ 46 水色惑星*飴色大地 ■

 あまえんぼの君には水色のあめをあげる
 さみしい時も かなしい時も
 空を見上げてボクを感じて

 ホラ
 こんなにも広い大地に君は今 立っている
 水色の空のムコウにいる何かを
 探し出すために 君は今 立っている
 サクラ色にかがやく 季節にには後すがた
 どうしたんだい? 話してごらん?
 ボクはいつでも君の味方さ

 ネエ
 こんなにも大きい惑星で君はまた 泣いている
 立ち上がり涙をふいてまた気づいて?
 生きているアカシに君は今 立っている
 こんな世界で何をしているの
 何のために君は生きていたいの
 ギモンはふくらみついには悩み
 そしてまた 君も 死んでゆくんだね
 
 ホラ
 こんなにも広い大地に君は今 立っている
 探し出すために 君は今 立っている

 サア
 歩き出し見える世界を 絶望し 記憶して
 水色の空のムコウでみつけるのサ
 君のいる意味と ボクのいる意味さえも
 見つけたら 見上げてね?
 立っている 君は美しい


■ 47 ■

 あなたが羽を燃やしたの
 だから ここはもう
      ずうっと夜よ


■ 48 ■

 狂った君を 見るのも
 好きだよ
 一人 笑う僕も
 狂ってる

 朝陽が差し込むホテル
 ワインボトル 転がって

 回る
 廻る
 マワル 螺旋
 僕の
 ボクの
 愛しい 君へ

 殴る
 ナグル
 そして 笑う
 赤い
 紅い
 朱い 血溜まりに

 君の 涙こぼれて
 静かに海へ 沈んでゆくの
 まだ 悲しみは傷
 癒せぬ夢を 見ては 伏せて泣く

 影が作る闇に溶けてく
 君の姿

 あぁ

 やっぱり 愛したい

 殴る
 ナグル 笑う
 赤い
 朱い 血溜まりに

 君の 涙こぼれて
 静かに海へ 沈んでゆくの
 まだ 悲しみは傷
 癒せぬ夢を 見ては

 叫んで

 さぁ 涙をふいて
 静かに海へ 沈んでゆこう
 まだ 悲しみは傷
 癒せぬ夢は これで 終わりだよ


■ 49 ■

 昨夜、雷が鳴っていた。
 すると恋人は、
 「私は雷に打たれるとスーパー恋人になるよ」
 と言う。
 じゃあ、スーパーは何がスーパーなの、
 と訊くと
 「あなたをとっても愛でるわ」
 と言った。

 ・

 「僕は雷に打たれると、スーパー南さんになるよ」
 と言ってみた。
 じゃあ、スーパーは何がスーパーなの、
 と恋人が訊くので
 「そうだな……鬱にならないで一日中プラス思考になる」
 と言ったら、
 それはとんでもなくスーパーね!
 とワクワクされた。


■ 50 ■

 こんなことして
 許されるはずもないのに
 十字架に祈って
 許してほしいと言ってしまう

 神様は慈悲深くて
 まわりの人間なんて
 怒ってばかりなのに
 光あふれる教会に独りでいると
 なんだか
 とても
 落ち着く

 でもやっぱり
 逃げてばかりじゃいられない

 今ごろ
 神父さまが
 電話で警察に連絡しているだろうし
 さっきから
 天井に響くヘリコプターの騒音は
 TV局のものだろうし

 あーあ
 終わり

 こんなことした今でも
 本当に貴方が好きなのに

 好きなのに

 自分から会えなくしちゃうなんて
 どうかしてた

 神様は慈悲深いけれど
 きっと
 死刑のあとには地獄行き
 貴方は
 きっと
 今ごろ天国の門の前で
 やっぱり
 怒ってるんだろうな



--Presentation by ko-ka--