■ 又、双人ハ ■
■ 11 ■
なぞる 曲線を重ね
美しさとはなんだろうと 君は言う
六回消しゴムをかけた くすんだ裸体を重ね
愛しさとはなんだろうと 君は言う
動いたら 終わり
描きつけたら
■ 12 ■
スカートを花にさせながら
君はくるりと
まわって笑う
三階の窓のたてつけは
開きっぱなしに
丁度良かった
これが恋なら、どんなにか!
スカートの花をふゆらせて
君はあいつの
となりで咲くから
走って逃げた踊り場は
胸の墓標に
花を散らせて
丁度良かった
■ 13 ■
夜の幕が
薄い膜が
あなたの唇にかかって
小気味良いイマジンのレコード
アークティカのギタリスト
酒を飲むように クッと誘う
その唇が よる 夜 酔うほどに
エイフェックスの鼓動
ラスマスフェイバーのピアノ
濃い 恋 愛 合うほどに唇
あぁ そう 僕もなんだ 壊したい
夜の幕を
薄い膜を
■ 14 ■
二度目はないといいつつも
もう
四度目
君は本当にやさしいね
僕は本当に無責任だが
■ 15 ■
その目を
その唇を
その匂いをただよわせて
顔のない女が 一歩踏み出すたびに
その声を
その眉を
その指先をひそやかに
招き寄せて 媚を売る
その女を
その恋を
その偽装を買った
金のない女が嘘を売る 踏みだすたびに
■ 16 ■
あなたは二度も私を殺して
それでいて笑っているの
「二度目に訪れた死は、そんなに怖くなかった。なぜなのかしら?」
三度目に会ったら
もしかしたら殺されるのかしら
微笑んで「愛してるよ」と囁いた拳銃が
まるで三日月を壊すよう
■ 17 ■
■ 18 Li-ra Li-ra ■
君は唄った
リラリラと笑った
夕暮れの皿が沈む
そういう色に限って
許すの やめてほしい
リ ラ
鈴が鳴った
君と一緒に
星が揺れた もう泣かない
■ 19 ■
花びら一片 ひらら
彼女が降らせる ひらら
健康的にまるまる太った
彼女のまわりに花が降る
時々ぼうっと窓を見る
横顔にそっとかぶる一片 ひらら
恋しているんだ
叶わない恋を
ひらら 彼女の熱量が
花びら降らせる ひらら
見つめ続ける
ただ 静かに
それだけでいいらしいね ひらら
健気な彼女を眺めている
僕の頬には
銀杏の葉が ひらら
落ち続けているといいうのに
■ 20 ■
通るたび
見上げるあなたの微笑む目
硝子ごし
恋していてはいけませんか
いつもの
レンガの
歩道にて
ハトが時折うずくまる
いつもの
レンガの
歩道にて
カラスが掠れた声を出す
いつもの
レンガの
歩道にて
愛想笑いとわかっているのに
恋していてはいけませんか
今日は服装が替わりましたね
オータムセールの時期ですからね
ポーズも少し変わりましたね
右手を腰に
左手をあげて
ブランドバッグをかけられましたね
通るたび
見上げるあなたの冷たい目
硝子ごし
愛想笑いのマネキンさん
いつもの
レンガの
歩道にて
目が合う日
夢見ていてもいいですか
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