■ 又、双人ハ ■
■ 1 ■
世界からすりぬけるひとりの旅路
何度も訪れる激しい後悔にふり返っても君の声は
「愛していたのに」
聞けない
■ 3 ■
懐かしいね
そう
とても懐かしい
思えば10分前
僕は君と出会い
一目惚れした弱みってやつで
8分前にはナンパして
5分前にはフラれたね
背を向ける君を
3分前に追いかけて
1分前には平手打ち
懐かしいね
そう
とても懐かしい
全部
いい思い出だよ……
だからもう勘弁してください
あっ そんな ヒールで踏まないでっ……
うわっ 唾! 顔にかかったじゃないか!
わかった わかりましたっ!
あぁっ やめて ソコだけは!
勘弁してくださいホント ホントに!!
け 警察!?
いやいやいや もうしませんから!
すみませんでした!
すみませんでしたああぁぁぁぁ!!
■ 4 ■
体育館
君と私は一番前
前ならえ
で
横ならび
二人で腰に手をあてる
廊下でも
横ならび
君と私の身長は
150センチ
で
チビスケコンビ
からかわれたら反撃よ
手を繋ぐ
君と私で3メートル
両手を広げて
廊下を占拠
君と私で巨人になって
心も
二人なら
どこまでも大きくなれる
■ 5 ■
ねぇ、本当のことを言っていい?
実は……私……本当はー…
やっぱりやめた!
君から言ってよ
本当の気持ち
実は……私……本当はー…
知ってるんだからね!
■ 6 ■
キラキラかがやく星空を
屋上から二人で見ていた
「あっ、流れ星!」
喜ぶ顔
どこまでも幸せそうな彼女に嫉妬して
「……きっとすぐ消え去るんだ」
なのに、笑顔で
「また流れるよ。一緒にお願いしよう?」
暗い
屋上で
彼女は
光って
「ねぇ、一緒に、笑おう?」
君の喜ぶ顔って
銀色だ
空もますます星が輝いていて
流れ星が
僕の
壊れそうになった心に愛情が
君の喜びが
全部一緒になって着地する
■ 7 ■
少女と手を繋ぐと
朝日の向こうに沈んでいった
水面をもぐり ざーん
二人はどこまでも沈んでいった
少年と手を繋ぐと
夕日の向こうにかけていった
地面を蹴って ふわり
二人はどこまでも飛んでいった
■ 8 ■
真紅の唇に一目惚れ
妖艶な
赤がひらいて
吐息は夜に咲く花のように散る
僕は言う
好きです 貴方が好きです
泣かずにはいられないほど
■ 9 ■
谷を結んだ唯一の吊り橋
毎年訪れる唯一のいちにち
彼と
彼女が
対岸から
吊り橋渡れる唯一のいちにち
ギシギシ揺れる橋の中央で
ひっそり二人が抱き合えば
彼と
彼女が
キスをする
ゆれる橋は揺りかごになる
来年訪れる唯一のいちにち
心待ちにしてお別れを
お別れを
■ 10 ■
混じり合う 視線の向こう
カウンターの奥で
カラン
カラン
カラン
キン
キン
キィン
光をはじく 甘い色
とろとろ 冷たく酔うように
「ねぇ、」
貴方の瞳に
一夜の 恋に
――乾杯
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