■ mai zd uru utu si zd uka ■


■ 61 ■

 正しい字で欲望と書ければ。

 貴方の薬指を甘くはむ声も。
 吐息の先のシーツの譜線も。


 正しい字で愛情と書ければ。

 蝋燭の花を散らした乳房も。
 ムチの乱舞で腫れた背中も。


 正しい字で淫乱と書ければ。

 開きっぱなしの細い足首も。
 汗でからみつく黒髪の光も。


 正しい字で心中と書ければ。

 愛液と混じった美しい血も。
 首筋からだれる犬の首輪も。


 もし正しい字で書けずとも。

 かわりに俺が書いてやるさ。
 あんたらが残した全ての事。


■ 62 ■

 ひたる空へ
 あおむ海へ
 形骸化するバルクは 秋への  挽歌

 いくつ文へ
 幻かく混ぜ
 あおり尽くしてたわむは 素地への  銀香

 記録的? 飛び立つ元号の網うそぶむ たひを越えゆく
 火球をすえて


 切りだす尾羽はひゅうむとじゃれ合う  空へ
 うらやむ魚影がざばりからみ合う  海へ


■ 63 ■

 無い物強請りかなぁ。

 いつか白馬の王子様が来てくれるって。
 妖精さんが恋をプレゼントしてくれるって。
 思ってた。

 誓いのキスも
 左手の薬指も
 ぜんぶ妄想。

 一目惚れされたい。

 ガラス細工の靴を持って
 愛しくてたまらないって
 告白されたい。

 ありえないかなぁ。

 思ってるだけじゃ現実は変わらない?


■ 64 ■

 おじさんの葬式の帰り

 泣きたくて

 どうしようもなく
 目からあふれそうなので

 あわてて
 ちいさな喫茶店に寄った

 だあれもいなくて

 フラフラ
 椅子に座って

 下をむいて
 肩ふるわせて
 ひくひく泣いた

 おじさん

 ちいさいころ遊んでくれたおじさん
 紙飛行機つくってくれたおじさん
 お年玉とお菓子をくれたおじさん
 ぐちゃぐちゃのケーキを食べてくれたおじさん
 美味しいと言ってくれたおじさん

 私が中学にあがってから
 いつのまにか
 来なくなったおじさん

 もらってばっかりだったよ

 おじさんから

 コトン
 と
 音がして

 見上げた先におじさんがいた

 「貴女の気が済むまで泣いてくださいね。誰も来ませんから」

 一瞬
 おじさんだと思ったけど
 違う人だった

 喫茶店のマスターだろうと考えて
 同時に
 おじさんはもうこの世にいないんだと
 突き付けられて

 声をあげて
 泣きじゃくった

 おじさん

 これが
 天国まで届いてくれたら
 私が
 おじさんにあげる
 最初で最後の最大のものだよ


■ 65 ■

 さむい時だけ

 ビニール袋のくちを軽く握って
 さむい車内で過呼吸気味にくもを
 作りつづける

 風にそっては
 ザーザー ザザンザザンザザン
 さむい車内にひゅーと喉からくる

 うん ですか

 みわたす限り
 窓ガラスも準備なく号泣中につき
 もう少しだけ

 いい ですか


■ 66 ■

 成層圏の
 清掃係

 双子の風船鳥たちは

 パクパク空気を食べてって
 プッププ雲のタネをまく

 きらきら
 にょきにょき
 もくもく
 ふわわん

 今日はどんな 形になるか
 双子はプカプカ考える

 パタパタちいさな羽ふって
 ビュビュウブおおきな風おこす

 ぐるぐる
 もわもわ
 ごうごう
 ざざざあ

 たまには台風 作ってみるか
 双子はくすくす笑いあう

 成層圏の
 清掃係

 双子の風船鳥たちも

 たまには休んで
 浮いている

 台風一過の日本の上空
 綺麗サッパリお掃除完了

 次はどの国行こうかと
 ふわふわプカプカ考える


■ 67 ■

 地球は青いまま死にゆくだろう

 けれど
 君だけはどうか

 宇宙から存在を許されるようにと
 暗闇の中 祈っている

 小さな命 こんなにも愛しくて
 どうしようもなく
 焦がれるというのに

 君のことだと ついに言えないまま
 あの
 小さな命は きっとすぐ消え去るんだ

 けれど

 どうか


■ 68 ■

 傘を さすことを
 オススメしたいけれど
 実は ボクは
 傘を壊す名人で

 だから 冬の雨だけは
 コートのフードをかぶっているんだ

 ナイショノはなし

 実は ボクは
 雨を呼ぶ名人で

 だから 春の雨だけは
 いつまでたってもブーツのままなんだ
 不幸の不を
 雨で流してあげよう


■ 69 ■

 おまえのコトはなんでもわかるよ
 その涙の理由も その笑顔の理由も
 なにも言わなくたってイイんだよ
 その涙の理由も その笑顔の理由も
 さぁ おいで
 思い切り抱きしめてあげよう


■ 70 ■

 5 お早う、今日の早起きさん。
 6 お母さんの、お手伝い。玄関の掃除なんか、どう?
 7 朝食はしっかり食べようね。
 8 学校の授業は退屈? それとも楽しい?
12 お昼ご飯だね。今日はパンかな。
15 部活、部活。うーん、エンジンかかってきたよ。
17 ただいまの後は手を洗おう。
18 夕飯は、家族みんなで食べようね。
19 さて、PC立ちあげて、メビウスリングにでも行こうかな。
20 カタカタ……
21 カタ……カタカタ
22 カタカタカタ……カタ
23 うーん……カタカタ
24 カタカタ……えっ、まだ寝ないの?
 1 カタ……。
 2 ………。
 3 ぐうぐう。
 4 すやすや。



--Presentation by ko-ka--