■ mai zd uru utu si zd uka ■


■ 291 ■

 水面に映る月
 を
  包み込むティーカップ
  を
   包み込む手のひら
   を
    包み込むあなたの両手
    を
     包み込む穏やかなベランダ
     を
      包み込む夜の静かな住宅街
      を
       包み込む緑の街
       を
        包み込む大きな県
        を
         包み込む日本
         の
        中の大きな県
        の
       中の緑の街
       の
      中の夜の静かな住宅街
      の
     中の穏やかなベランダ
     の
    中のあなたの両手
    の
   中の手のひら
   の
  中のティーカップ
  の
 水面に映る二人


■ 292 ■

 あの世とこの世とどっちも捨てがたい
 ならば今宵は輪になり踊りましょ
 報せしれしれ迎え火もうもうと
 夕暮れつくり提灯ともし ましょ

 浴衣着て うちわふれふれ
 草履の音はカラコ ロカラ
 アイスいっこ 緑のコーン
 150円 丁度 毎度

 太鼓トロトン 鉦こすったら
 飛び込ん だ 輪が広がって
 一歩出して 一歩さがって
 よいさよいさ  パパン

 あの世とこの世と どっちいいかなと帰った先祖悩んでる

 踊りましょ

 うちわをふれふれ線香絶やさずカラコロ
 ぼんぼり廻るよロウソクひとりでに揺らる
 スイカと花火と虫の死いとこが走った
 送り火焚くまで盆のお祭りは続いてく

 たまに帰ってくる気分転換にひいひいひ孫の笑い声いいね
 また来年


■ 293 ■

 イチゴ
  水着も同じ色
 メロン
  さっそく日陰で休む
 レモン
  砂から出てくる木片
 
 ブルーハワイで決まりです


 イチゴ
  恥ずかしげに組んで
 メロン
  にごらせたサラサラの泥
 レモン
  カンカン鐘鳴らされて

 ブルーハワイがハイカラなんス


 イチゴ
  250円ですが
 メロン
  こちらも250円
 レモン
  300円いただきます

 ブルーハワイにやっぱりします


 イチゴ
  舌出し色見せて
 メロン
  草むらのシートから
 レモン
  キラキラの砂へ飛び出した

 ブルーハワイちゃんラブラブビューティー


■ 294 ■

 座席ライトがフェードアウト
 舞台は黒と見紛うばかり

 私は音を
 たてないように
 舞台中央へ静かに進む

 突然のライト
 音楽が始まる

 クルクル 踊る クルクル 踊る

 舞台の袖の
 監督もまわる
 視界のはじでスイッチが入る

 カチリ カチリ 赤 青 白

 クルクル 踊る クルルクル 踊る


 きらきら真珠が反射して
 きらきら化粧をしているみたい

 音楽が終わる
 突然のブラック


 深海の奥で

 まだ踊り続けていたい


■ 295 ■

 静かな森を越えた砂漠に
 錆びた灯台
 眠る珊瑚礁

 どこか遠くへ行きたいときは
 雲にかかった
 虹を歩くの

 青い星がぱらぱらと降る 予感
 白い月がくすくすと笑う 予感

 煌めいて

 足浮かせ虹の橋渡る羽を背負った
 ちいさな子供たちの旅人
 歌い続ける

 眼下に広がる土地名も知らぬ羊使い
 死んだ都市
 岩の洞窟
 糸のオアシス

 La la la la ...


■ 296 ■

 閉じる 扉の奥にただ
 静かに 落ちたままのハンカチ

 故郷の森の
 故郷の蚕を
 故郷の母が 紡いだ糸で

 織られた白い ハンカチ

 仕舞われた思い出が
 全て
 透明に 染み

 ひとたび出せば 重く

 もう居ない人々を想い
 そのハンカチで目じりを押さえ

 抱え

 落とし


 また  閉じる
 また  開くまで


 故郷よ


■ 297 ■

 岸壁に座礁している
  古い船の中で眠ろう
 貝の細工の手すりぬけ
  夢の海に沈み眠ろう

 三日月からこぼれた地図
  濡れた壜のふたを開ける

 星をまとめてピアノにしたら
  君の声のもとへ飛んでいくよ

 エン・レッディ・バンラ
  魚の背を
  そうとなぞる
 デル・ユ・ッツィー
 バルパン・ラ・ソ・ララ
  夢の中で
  恋に落ちる

 海底の宝石箱
  金の瞳を閉じ込めては
 ある神話の楽譜通り
  花の名前を歌い踊る

 きっとどこかで出会えたなら
  夢じゃないとつぶやいて

 流れるように時間のこと
  唇と秘密にしてね

 エン・レッディ・バンラ
  燃えてしまう
  肖像画と
 デル・ユ・ッツィー
 バルパン・ラ・ソ・ララ
  夢の中で
  恋に落ちる

 エン・レッディ・バンラ
  深い船と
  ともに眠る
 デル・ユ・ッツィー
 バルパン・ラ・ソ・ララ
  君が好きと
  呟く夢


■ 298 ■

 巨木のまにまにダリアが咲き乱れている向こうに
 小さな街がありました

 唯一のビルにはチッチという少女が住んでいました

 隣の部屋にはペンギンさんが住んでいました
 その隣にはピンクちゃんが住んでいました

 チッチは
 エレベータが
 だーい好き

 ところが
 今日
 エレベータがなくなっていたのです

 「エレベータがない!」

 チッチは叫びました

 「エレベータを探しに行こう!?」


 するとペンギンさんは言いました
 「エレベータがないならエスカレータに乗ればいいじゃない」
 ペンギンさんはエスカレータに乗っていってしまいました

 ピンクちゃんも言いました
 「エレベータがなければ階段を使ったらいいじゃない」
 ピンクちゃんは階段をトントン歩いていってしまいました


 チッチは
 ぽっかり空いたエレベータの前に座って
 エレベータが返ってくるのを待ちました

 誰もいなくなったビルの中で
 ぽっかり空いたエレベータの前で

 ずうっと
 ずうっと
 待ちました


 すると

 ウィーン!
 と
 エレベータがきたので
 チッチはうれしくなりました
 チッチはエレベータに乗りました

 ボタンを押さなくても
 エレベータは
 動きました

 ずうっと
 ずうっと
 高くのぼって
 天国まで飛んでいきました

 巨木から落ちたダリアのはなびらが
 ビルの一階で死んでいるチッチの上に

 やさしく降り注ぎました


■ 299 ■

 見せ掛けの気丈

 瘠せ掛けの木城

 卓上机上にトツトツ叩けば
 裏側は

 見せ掛けの軌道

 雑ぜ掛けの軌道


■ 300 ■





--Presentation by ko-ka--