■ mai zd uru utu si zd uka ■
■ 21 ■
よかった 死ななくて よかったね
心も
体も
痛い
けれど
よかった 本当に よかったよ
いつか
そう思う日が
来るよ
よかった 生きて よかったと
なんでも
ない時に
きっと
今は
思えないとしても
未来は
思うかもしれないと
呟いていて
よかった 死ななくて よかった
■ 22 ■
カレーをたべて
華麗にたべて
華麗に飛んで
どこにもない場所へ
誰もいない場所へ
舌が
ひりひりするよ
声を出しても灰いろの人波は
見もしようとしないから
ひりひりするよ
■ 23 ■
でも知ってるかい
うるしの木を削って
心ゆくまで乾燥させると
アザやかな
アデやかな
黄色になるんだってコトを
痒さは とまらないけれど
知って 損はないでしょう
■ 24 ■
わたしが春の触り方を知らないのは
赤と緑の区別がつかないからです
燃ゆる草原にひとり ゆっくりとほろびる
尾ひれを梳いた 金魚のように
凍るたらいにひとり じっとりとほころびる
(我々には手の下しようがなかったのです、残念なことに我々は3人いました。皆が一斉にスウィッチを押し、我々は責任を無に押しやったのです。これでいいのだと、今なら言えるでしょう。しかし未来ではどうかわかりません、わからなくとも良いのです。なぜなら我々は ――この間、空白が続く―― の未来をも無に押しやったのですから)
枯れゆ草原にひとり
春とも区別もつかぬのに ほころぶ
■ 25 ■
貴方の前に
舐める獣がいる 炎のかたちを模した熱量
さあ裁きなさい
ウツクしき魔術 あの子の魂が救われると
館を覆う
がらんどうの夜に 赤い判決が下されてゆく
さあ愛しなさい
ナミダする降臨 その糸をひいてフラスコが砕ける
魔術師R・C
「
不安定な器だったのです。おそらく転生は成功しないでしょう。儀式は順調に進みました。結局は運という事になりますが。もうおしまいです。目をそむけたいならそむければ良いのです。なぜ? 愚問というものです。われわれは、人間なのです。人間なのです。
」
建築家K・A
「
ボックスラーメン構造は、耐震性はもちろん火災にも耐えます。しかしこりゃぁ……参りましたな。こんな大火事には到底。いえね、あたしが言っているのはちょっとしたボヤとかですわ。あぁ、星が真っ赤だ。煙がほれ、熱を出し切って白くなってら。
」
いつまで こんな こ と を
つづけて いれば い い の
はぐるま まわり つ づ け
僕は目覚めてはいけないの ですね + ++ +++
死者のたましい
ほふる時間軸は 神と魔王の手を離れた檻
もう裁くことなどできないくらい
あの子の魂は穢れている
全てが鎔ける
すずかけの明日に 迷うことさえ許されてはいない
愛そうとして
永遠をもとめ 結末を見ずに倒れこむ老人
消防士S・T
「
全焼。飛び火ナシ。生存者ゼロ。死者イチメ……ニメイ。自力で脱出した男の話によると、火災の原因は館の主人が狂いみずから火をつけて回ったとのことであります。巻き添えに彼の孫で心臓病を患っている少年が……逃げることもできず…。ご冥福をお祈り申し上げます、アーメン。まぁ、本当のところ、わたしはクリスチャンではないのですがね。
」
魔術師R・C
「
炎、炎! 再生の象徴です、まさに生きているようだった! 魔術は成功した。成功したのです、おそらく、きっと、たぶん、あぁ。違う! ウソじゃない! 本当なのです、狂っていたのです! われわれは信じなければなりません。なぜなら人間だからです。人間だからです。
」
おじいちゃん
ぼく
うまれかわったら鳥になりたい
飛んでいくんだ ずっと むこうまで
■ 26 ■
ツインクルのリズムは
中身ほど甘くない
けれどどうしても
振ってしまうんだもうやめたい
■ 27 ■
小さい木べらを
いくつ盗んでも
美味しさはそのまま
ビニールの、パッケージのような人間なんて死んでしまえ。
でも
それで
白さえ
なくなってしまうのは
今のところ一番いやだなぁ
■ 28 ■
むかしむかし
あるところに
おじいさん
と おばあさん
と かぬまくんが
おりました
おじいさん
は やまへしばかり
おばあさん
は かわへせんたく
かぬまくん
は おにぎりもって
おじいさん
と いきました
やまのうえで
かぬまくん
と おじいさん
は おひるごはん
するとおむすび
ころりんこ
ころころころりん
すっとんとん
おむすびころりん
すっとんとん
ポチャン
いけのなかから
びじょがでてきて
おまえのおとした
おむすびは
こっちのおむすび
か うめあじ
こっちのおむすび
か やきみそ
かぬまくん
は なやみになやんで
ぼくのおとした
おむすびは
かわへせんたく
しにいった
おばあさん
が つってきた
しゃけをやいて
ほぐしていれた
おいしいおいしい
しゃけおにぎりです
いけのびじょは
しょうじきものの
かぬまくん
しょうじきものの
かぬまくん
こっちのおむすび
こっちのおむすび
どっちももってけ
だいサービス
かぬまくん
と おじいさん
は おむすびたらふく
くいました
めでたしめでたし
どんとはれ
めでたしめでたし
どんとはれ
めでたしめでたし
めでたしめでたし
どんとはれ
■ 29 ■
お父さん
お母さん
おじいちゃん
おばあちゃん
妹のみち
弟のゆうき
みんな
ごめんなさい
一足先に
天国へ逝きます
お葬式のお金
用意できなくてごめんなさい
お正月のお年玉
全部使ってください
みんな
ごめんなさい
理由は言いません
言えません
ごめんなさい
ありがとう
さようなら
いつか
また会える日まで
■ 30 ■
おかあさんの
おなかには
ぎんいろのすじが
いくつもあるの
きょう
おふろで
きいたらね
このきずあとは
あなたが
おなかにいたとき
おなかがふくらんで
できたのよ
って
わたし
びっくりして
あやまったの
ごめんなさい
って
そしたらおかあさんは
おなかを
やさしくなぞって
いつもの
あったかい
えがおで
うまれてきてくれて
ありがとう
って
いってくれたの
このきずあとは
あなたがおなかのなかにいた
しょうこだから
おかあさんは
ずうっとうれしいのよ
ありがとう
うまれてきてくれて
ありがとう
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