■ mai zd uru utu si zd uka ■


■ 201 ■

 その足跡は 意外に 硬く
 その残骸は 意外に 脆く

 ひざまづいた 落ちた 月

 笑うことも
 死ぬことも

 全て理解して 落ちた 月



 あぁ

 光はもうない


■ 202 ■

 巨大な墓標が鎮座する
 四角い都会の真ん中で
 見上げる空は
 いつでも高い

 あの秋の

 田舎の道の

 見上げる空とは決定的に


 スクランブルから蠢きだす
 人 人 人 の波間の風は
 するする抜ける
 透明色の飴細工

 あの冬の

 田舎の人の

 すきま風とは決定的に


   「違う」


 思う

 思いだす

 父親の背中はいつでも大きかった


 濁ったコンクリートの河に反射する
 赤ちょうちんが出迎える居酒屋の隅
 焼酎のお湯割りと
 煮卵と牛スジ食べ

 思う田舎の

 懐かしさを

 グイと飲み干すたびに


■ 203 ■

 脚本番号:100−1
 主演:LとM


 店の入り口にLとMがやってくる。
 LとMの目の前には発券機があり、店の中では黒エプロンの店員が待機している。
 さらに奥の厨房にはコック帽の店員二人が待機している。
 店内の壁は黒い幕に覆われている。

 発券機には大きくこう書かれている。

 ・辛さを選択してください
  →1 2 3 4 5


  L「選択の段階で死ぬのは4番以外ありえない」
  M「なぜ?」

  L「言い訳がつかないでしょ。1は初心者用・2はちょっとした冒険・3は普通・5は辛いの好きな人用」
  M「4は要らない子なんだ?」

  L「そう。だから1・2・3・100にすればいいのに。エレベータの通過階みたいに」

  M「なるほど」
  L「そうして、4から99は死ぬんだ」
  M「一番辛い」

  L「そんなことないよ。最初から存在しないもの」

 暗転。

 LとMの目の前に発券機がある。それには大きくこう書かれている。

 ・辛さを選択してください
  →1 2 3 100


  L「100だろうな、普通に考えて」
  M「1ください、1」

 券が発行され、二人が席に着く。
 黒エプロンの店員が二人の券を切り取り、厨房に待機していた、コック帽をかぶった店員二人にそれぞれ渡す。
 コック帽の店員二人が、LとMの背後にまわり、Lの首を包丁で掻く。
 Mの首を数秒絞める。

 LとMは机に伏したが、数秒後、同時に起き上がる。
 LとM、首をさすりながら。

  L「ん? ん、うーん。なんだこんなものか……」
  M「辛ッ! ないない、あぁ、失敗したなぁ……」

  L「ね、交換しない?」
  M「絶対ダメ」
  L「いいじゃん、交換しようよ」

  M「それより、4から99番に、弔いの言葉はないんですか」
  L「ないよ。だって、死んでるじゃない」

 Lが黒い幕に向けて首をかたむけると、店内の黒幕が落ちる。
 ずらりと吊るされて死んでいる人間達。一人ずつの服に4〜99の番号が記載されている。

  L「いいこと教えてあげる。死人には、耳もないんだよ」
  M「言っておきますけど、2番と3番の人は生きてますよたぶん、病院で」

  L「1番もね」
  M「100番は?」

 L、立ち上がり、右手を額にあてる。

  L「あー…、ホラ、私、忘れてた。うっかり。私そういえば死神だった」
  M「100番選んだ時点で、生き残る算段あったんじゃなかったんですか」

  L「だって、ホラ、辛いのいやだって言ってたから私がって……思って」
  M「1番を選ばせちゃった時点で、あなたの負け確定じゃないですか」

  L「死にたい」
  M「極甘ですね」


■ 204 ■

 振る

 震える
 
 歩く


 誰かが落としていった吸殻を
 執拗に拾う


 終わる

 秋が

 止まる


 お前の国の煙草は
 滑稽な名前ばかり付ける
 と

 希望を吸いながら

 ジョンが先に
 逝ってしまうのを
 見ている


 放る

 描かれる

 落ちる


 震える

 寒い


 幸運な星は ない
 7つの星も ない

 あれは らくだ味の煙草だろう


 拾う

 執拗に

 震える 秋


■ 205 ■

 よみち
 街灯に反射する 白痴の古代魚の鱗
 眼底に眠るめくらの海老髭を引きずり
 およぐ

 O−totototo

 O−totototo

 わたし  尾びれを掴み道端に叩きつける 上腕
 眼球を穿り出し 裏側を虹色に塗り潰す
 あなた

 の

 細 いいいいいいいい 指

 U−popopopo

 O−totototo

 詩吟の古都 沈む庭 海草も立ち位置を決めかねる
 細い指 噛み砕く雨 怯える珊瑚の陰影に卵が泣く
 いまは

 U−popopopo

 U−popopopo

 ひどく

 有限の反響音

 O−totototo

 ・

 o

 追熟もなく
 ふける


■ 206 ■

「はぁ……っ」

「あ…うっ……」



「く…っは」


「……っつ…」



 ねぇ、
  セックスする音と泣いている音が一緒なのは なんでだと思う?


■ 207 ■

 若干の王将

 若干の総称

 若干の草々

 ジャッカルの葬送

 ジャッカルの鼓動

 ジャッカルの孤独

 まったくの苦悩


■ 208 ■

 群青採光再度サンプルを眼球の裏に収納し
 一体全体混在している振動装置五○メータ
 質素に赤紫蘇吐いて戻したオオヨシゴイなど押収しペレットを硝子器に移す

 いくつ数えても十秒
 いくつ数えても十秒


■ 209 ■



■ 210 ■

 ビーカーの裏に 苔が蒸していた
 先生にきくと わざとだと云った

 ちりとりの裏に シールが貼っていた
 友人にきくと わざとだと云った

 勉強机の裏に ナイフで書き込みがあった
 おばさんにきくと 何も云わなかった


「タスケテ」


 勉強机は おばさんから譲り受けたものだった

 本当は 何も きけなかった 本当は
 勉強机は ビーカーよりも シールよりも


「あぁ、」


 強く 壊れそうだった


「僕が、」


 おばさんと同じ血を見た
 瞬間の
 ファインダーは眼鏡で
 僕はフライングで おばさんよりも 早く


「タスケテ、
     もらえず 飛んだ。」




--Presentation by ko-ka--