■ mai zd uru utu si zd uka ■


■ 211 ■

 ラップトップのザザ波にゆられ
 電子の海で おぼれている
 最近見た夢のだんぺん
 昨日食べたはんぺん
 机の上のアカペン
 窓の雪リッペン

 ある日 (六片÷2) さんがつだった

 あの息は最初から最後まで聞こえない
 周波数が違うらしいと言っていた
 ごろごろしつくしてからの停止
 見せられたピンク状の物ども
 洗面器に散りばめられた黄
 あは 何でもないよ?
 ダイジョーブだよ?
 うんホントーに
 本当に

 急なカーブをえがいて

 消えるように さんがつだった


■ 212 ■

 あの 人に 告白する
 あの 人は ないて走 る 一人だけで凍える、まぶしそうな雪原

 あの 人に 触れていたい
 あの 人は 振れて痛 い 人波は懐かしく、ドームに吊るされてく


 サン サンと 降りそそいで
 サン サンと 振り雪いで フーコーめいびな夢、あの人と踊る町

 あの 人が 振り雪い で 血のような針の音、まぶしそうな切断


■ 213 ■

  0

 老婆は失う
 眠りの奥に雁が羽ばたき 踊る
 人々の白い足袋が
 神よ神よと交互に祝う夜
 かがり火
 鉦の擦り合う音
 宵が
 酔われ
 歌い 踊る

 失われていく


  1<

 紅白の幕に彩られた公民館に並べるものを
 パイプ椅子か座布団かで悩んでいます
 とんでもございません
 パイプ椅子は祝儀と記帳の受付にふたつ
 真樹夫と佳世ちゃんのためにふたつ
 じろちょの大婆さまにひとつで
 もちろんのこと
 ええ
 場所ですよ場所! ひいちゃん!
 かおるに仕出しの手伝いをさせて頂戴

 ねえ 私
 あなたがいらして嬉しいのです
 本家にご挨拶にうかがっても
 いつも部屋に篭っていらっしゃるし……
 本当ですよ?
 まさえ! 盃蔵から出してきたら磨いて!


  2<

 おおきくなったら
 およめさんになる
 しろいの
 ぶわーって!
 そんでね
 おめでとうおめでとうって
 ゆきお兄ちゃんとね
 はるなの
 おはなのみちをー
 あったりまえだよ!
 ゆきお兄ちゃんは おむこさんなの!
 でね
 でね?
 みんなが
 おめでとうおめでとうって
 え?
 いいの?
 やった!
 はやくやくそくやくそく

 指きりげんまんウソついたら針千本のーます

 指きった!


  3>

 『それでは、新婦友人のスピーチです。西藤春奈さん、どうぞ』

 『はい。
  えー…、

  夕美、そして雪雄さん、ご結婚おめでとうございます。

  二人を小さい頃から知っている私としては、
  こんなに嬉しいことはありません。

  夕美とは、保育園のころからずっと一緒で……
  高校は別々になったけれど、また大学で一緒になりました。
  雪雄さんとは従兄で、私が小さいころはよく遊んでもらいました。

  三年ほど前。私がちょうど風邪をひいて、
  夕美がお見舞いに来てくれたとき、偶然
  雪雄さんも母に用事があって来ていて……、私が紹介しました。
  ふたりの恋のキューピッド? なんて思っています。

  夕美! 世話好きなあなたは雪雄さんにピッタリだけど
  あんまり世話焼きすぎると「お母さん」になっちゃうから、
  ほどほどにね!
  雪雄さん! 夕美はこう見えて人一倍繊細な子なんです、だから
  夕美のこと……っ…! ほっ……ほんと…にっ…!
  あ…ごめんなさ……っ、本当に! よろしくお願いします!
  お幸せに!!』

 『西藤春奈さんのスピーチでした』


  4>

 結婚する資格なんて
 ない
 ひとに告白するの
 初めてなの
 聞いて
 私
 今でも
 心から離れない人がいて
 もうずっと
 小さいころから
 その人
 結婚してて
 どうしようもないのに
 消えないの
 ね
 こんな私と
 今まで付き合ってくれて
 ありがと
 幻滅したでしょ?
 別れましょう
 ずっと
 裏切ってて
 いつか
 話さなきゃいけないって
 ごめんなさい
 私
 本当
 どうしようもない

 どうしようもない


  0

 老婆の足元に置かれた巾着袋
 亡くなった夫のイニシアル
 雁が飛び立つ杉
 目覚める
 かがり火囲い踊る 白い足袋
 太鼓の太い振動
 踊る装束を
 歌を 笑いを
 宵の祝い

 老婆は畏れぬ目を濡らし
 つかの間の夢をも失う夜に

 響く
 ゆれ 失っていく


■ 214 ■

 22回目の誕生日に
 嘘を言って パタリと死んだ

 ポケットの中に入れた指輪は
 銀の味と 匂いがしてる

 2度目の散髪はできないまま
 棺の中で ふり乱した黒


 おとといの夜に ため息ついて

 想い出は全て お湯につけた


 どこかに持っていくことも
 できたと嘘を 言っておくよ

 誕生日の時とは逆になった
 指輪だけは 燃やしておこう

 23回目の誕生日は
 舌を出して 泣いてみよう


 きのうの朝方 ため息ついて

 これも嘘だろ そう問いかけた


 雪が鳴き止んだあとも
 嘘のように 息をしていない


■ 215 ■

 むむ、むるる むむっふふー。
 むむ、むるる むむっふふー。
 むむ、むるる むむっふふー。
 むむ、むるる むむっむっむー。

 腰のカルトロス 一人もどかし
 腰のアントロワ 一人おどかす

 すぐりの あの家に盗みに入って警報ー、あぁー、
 みっつの晩に窓をたたいて 鉄格子はお菓子だよ
 よっつの月はコンペイトウ 腰のカルトロス

 むむ、むるる むむっふふー。
 むむ、むるる むむっふふー。

 秘密の呪文とカカシ 並べたストローヘッド
 愛の言葉なんて 一人忘れてた

 かなりの 確立でチョコの吹雪にあってパンチラさー、あぁー、
 いつつの石を金魚にぶつけて 水槽の中飴じゃねぇ?
 むっつの鍵はハズレすぎな 腰のアントロワ

 どうして王子は来ないんだ 今夜のために何ヶ月も
 練習したよファーストキス ガムも噛んだんだよー、おー、


「もしもし?
 今ねー、棺おけ入ってるんだけど、マジで。
 時間過ぎてんだけど大丈夫?これ聞いたら電話してください」

「もしもし?
 あのさー、紅茶なくなっちゃったんだ、
 珈琲しかもうないけどいい? 自分で淹れらんないんだけど、
 早く来てね!」

「もしもし?
 もうパーティー始まっちゃってるよ。
 早くしないと獣に戻るからさぁ、魔法とける前に来てね」

「もしもし?
 ちょっとこの靴合わないんだけど、靴ずれマジいてぇ。
 今どこ? こっちは今城の柱のとこ」

「もしもし?
 もー、えーっとさ、今夜はいつでもいいから、電話ください」


 木の鼻 縮んだよ自分で食べたー、あぁー、
 ななつの海が嘘だってコト 食べちゃったからわかるんだ
 やっつのナイフ投げすぎて腕 痛くなって泣いたよ

 突然君が白馬に乗って 花束わたす夢なんて
 おかしいくらい笑えてくるよ 濡れたシルクのドレス
 ここのつの鐘もう明日はない 本を閉じてももう来ない

 まるでおとぎ話だね
 腰のカルトロス
 一人アントロワ
 濡れたシルクのドレス
 笑う青い小鳥

 そばに居るのに 涙で気づかない


■ 216 ■

 倒れこむのでした

 いいんだ、いいんだ! 分かっていた! 消えてしまうなんてことは!

  「雪が綺麗ですね」

 いいんだ、いいんだ! 分かっているとも!
 ワタシも君を愛しているよ! 親愛なるワタシの冬目透析さん!

 倒れこむのでした

 厭になったのです
 こんな毎回、毎回、毎回!

  「消えてしまいたい」

 いいんだ、いいんだ! 分かりきっている、エゴだ!
 ワタシはね、愛しているのだよ、君を愛しているのだよ!

 泣いて
 私の傍らに
 アナタは倒れこむのでした


■ 217 ■

 雪が降る 昼をかぶせた
 もう気が狂い そ う で E
 真夜中と いつわる雲は
 そう新しく白を 纏 わ る U

 はちきれそう

 甘い君は君じゃない

 笑い声響くね冷たいよ O

 心が壊れたの何も雪さえも なにも
 為す術がないから何も雪さえも 叶わない


 朝が来る 靄をかぶせた
 もう燈が暗い よ う に I
 貴女の目 もてあましては
 あの新しい壜を 犯 し た A

 はりさけそう

 とろける耳を咬むたび

 六は融けていく死んだ夢のよう U

 明日が壊れたよ何も雪さえも 愛も
 白濁の窓に何かを掴むまでは 迷わない


 心が壊れたの何も君さえも なにも
 為す術がないから何も雪さえも
 叶わない
 明日が壊れたよ何も夢さえも なにも
 白濁の雪に冷える髪はすり抜け
 愛して R


■ 218 ■

 チチ チチ チ 
 チ チ チチ チ 
 チチ チチ チチ チ チチ キ

 I Need Paranoid,,,,,
 When dying only now,,,,,

 あらんかぎりの


 シシ シ シシシ
 シ シ シシ シシ シ シシ Ra

 今求めてるよ

 Deletion of all,,,,
 Release of all,,,,,,,,,,,,


 もうマリアと名づけてしまおう
 素直になれない僕のマリア

 少しだけ回帰構想

 Iの隙間の
 雪を舐めてるよ


 The gripped one,,,,
 Snow that disappears,,

 ララ 遠くなる 裂けていく
 ラララ ラ ラ ララ ラ

 チチ チチ チ 
 チ チ チチ チ 


 今求めてるよ


■ 219 ■

 白
 黄
 水色
 緑
 赤
 青

 白
 灰

 ノイズ

 深夜になりました

 砂 砂 ザザ

 嵐


■ 220 ■

 指
    が


 少なからず嫌悪感を抱いた
 それも
 文字通りの意味で


 嫌悪感は  目 を横にそらして
 だんまりと抱擁をうけとめるのだつた


「君の指はいつも冷えているね

     ボクは それすら大嫌いだ」


 少なからずとは 時間の意味だった
 嫌悪感は 手  を離すと次に

 雪のような声で言ったのだった


「あっちへ逝って


 二度と        戻ってくるな」


 と。




--Presentation by ko-ka--