■ mai zd uru utu si zd uka ■


■ 11 ■

 電子の暗闇を漂いながら
 何度も何度も旅を繰り返して
 とまっては
 うつむき
 画面の向こう
 まだあきらめずに
 クリック

 クリック

 クリック

 白いやさしさが集う場所

 メビウスリング

 たどりついた
 この場所の

 価値は私が決めるの絶対


■ 12 ■

 秋、深まり
 たわむれている、80本の
 線香を、立て
 なくした笑み、ゆがむ足音から思い出をめぐり
 気が付くと
 いつも、
 また
 今日が終わっている

 息子が、呼んでいる

 いつの日も、どうしようもなく写真のあなたを見つめる、だけで
 ひとつだけ、両手を合わせて願うわたしの目に水も、なくて

 暮れ、訪れる
 ゆらゆれている、片方だけの
 ロウソクを、立て
 愛の形を、ついにつかめずに閉じてしまう瞳
 どうかこれ
 だけは、
 まだ
 持っていてください

 わたしと、対の輪を

 銀のベール、なつかしい声が永遠を誓う記憶の、果てで
 そのうちに、わたしもそこへ行ける時がきたならもう、一度

 孫、ひ孫と
 わたしに笑顔、かけて走る
 元気をだして、と
 あなたのよう、どこか面影が似ている子供たち
 続いてく
 いのち、
 また
 明日が始まるまで

 夢でも、会いたいと

 いつかまた、どうしようもなく泣きじゃくることができた、ならば
 あなたの手、かけてくださいと写真に向けて語る、細く

 障子をしめ、心残したままあたたかい食卓へ、向かう


■ 13 ■

 金銭感覚の金! 恒河沙の河! 東西南北の南と書きまして、金河南でーっす! ハーイさてさて、今夜も23時12分からのスポットアナウンス、金河南ラジオ・スクランブルエッグのお☆時間デ☆ス。さっそく今日のおたよりにまいりましょう。えー…、福田町ィーにお住まいの「なんだまぢかんだまぢ」さん。えー、南さんこんばんは、ハイこんばんはー。実は、仕事場の同僚に「俺、男だけビューラー使ってるんだ……」と告白されて困っています。どうすればいいんでしょうか、ビューラー使ってそうな南さんなら冷静に対応できそうなのでメール送ってみました、と……。なんでやねん! いやいやいや、なんだまぢかんだまぢさん。ボクはですねー、家で女装することはあってもさーっすがにビューラーは使いませんね! おそらくその同僚クンは、ビューラー使っても女装はしないと思いますよ、まつ毛が長いだけデスね。だから安心してあのビューラーにはさんであるなんか白いゴムっぽいものをセットしてあげればいいですよ! きっと喜びますよー。さて、金河南のスクランブルエッグでは、皆さまからのお便りをドシ、ドシ、募集しております。宛先はー、K・I・N・K・A・N・A・N、キンカナン・あっとまーく以下略、スクランブルエッグ係まで。女装の話は今度どこかの某投稿掲示板のエッセイあたりで話さないと今決めました! 時間ですねー、今夜もグッナイ。金河南でシタ。



■ 14 ■

 カレーライスのレトルトを
 母がどっさり 送ってきたよ

 全部甘口

 これ常識

 カレーは辛いと 食べられない


■ 15 ■

 魔女は云う
 魔法は二度とかけられない と

 私は云う
 それでもいい と

 魔女は云う
 時間も少ししかもたないよ と

 私は云う
 それでもいい と

 返答の言葉が短ければ 短いほど

 魔女は
 喜び
 魔法をかけて

 私は 新しい名前を授かった

 チッタ・クロックローズ と


■ 16 ■

 焼き肉屋で働きはじめの私が、
 一番はじめに習ったのはビールの注ぎ方だった。

 キンキン冷えたグラスを斜めに傾け
 ビールサーバーの取っ手を
 「クン」と引く。

 金の液体を注ぎこみ
 それからグラスを真っ直ぐに

 みるみる泡が立って

 「ここだ!」

 というときにビールサーバーの取っ手を
 ガコンと切る。

 この切る動作こそ

 次のビールをうまく注ぐために必要な動き。
 生ビールは、
 ガコンときってこそ美味い。


 生、きる。


 これ大事。
 今でも仕事のメモ帳のはじめに「生きる」って、
 書いてある。


■ 17 ■

 やはり、あの森の奥にはもう行かないかも知れません。

 良く言えば、古き良きものを大切に。
 悪く言えば、変化を苦手とする人種なのでせう。


■ 18 ■

 秘密裏に行われたゲームは
 動く米粒を増殖させて惑星を覆いつくす
 と
 いうものでした

 私は後手で
 増殖を促進させるために権力者には一夫多妻制を制定

 米粒はすぐに枯れるので
 長く白くもたせるために
 拠りどころとなる宗教をいくつか制定

「お、やるね」

 彼は先手で
 既に
 このゲームの最大の核である
 いくつかの米粒消滅イベントを華麗にすり抜けていたので
 更なる増殖を促進させるために
 あえて戦争の種を植える

 海を隔てた場所へ米粒を数粒移動
 別な米粒が海を渡れるように笹舟を用意

「あ、その手がありましたか」

 気持ち悪いほど増殖した米粒を
 気まぐれにつまみあげて眺める

 だれかが神隠しだと叫んでいる


■ 19 ■

  羊の悪夢を 見てました

 高い ビルより 高い 羊が

 ビルを崩して暴れる 夢です

 気付くと隣

 彼女の隣

  はんたい隣に 羊の ぬいぐるみ


■ 20 ■

 のなかさんの溜息の中

 今日の中の溜息の

 のなかさんの溜息の外

 明日の中の溜息の

 のなかさんの溜息の内

 256人が

 幸運を逃がすまいと

 彼女に頼む 溜息の仲買人の名はのなかさん

 のなかさんの溜息の中は

 誰かの溜息のなかさん



--Presentation by ko-ka--