■ mai zd uru utu si zd uka ■


■ 131 ■

 あのドラッグ一滴でどこまでも墜ちて逝けたあの頃
 素晴らしく雪が降り積もって白すぎて泣いた

 願っていもいなかった恋が叶った瞬間
 それまで幸せだと思っていた何かが試験電波のように途切れた


 この天気は あの冷気は


 どうやらどのドラッグにも負けない 白樺の根のようだと


■ 132 ■

 あらあの人
 どうして歩いているのでしょう


 傷ついているのに
 傷ついているのに


 癒せないならせめてワタシが
 ここに居るよと教えてあげましょう

「……ねぇ、」

 旅人の肩を叩いた瞬間


 ワタシは溶けて
 死んでしまいました


 いいの

 それでいいの


 それでいいの?



 いいの
 ワタシは自他共に認める
 この世で一番素晴らしい雪なのだから


■ 133 ■

 なれたらいいね


 雪を


 好きになれたらいいね


 ……なれたらなんてそんなの

   所詮偽善だ

 ……成程君はモルモットなのか


 キシキシと雪が鳴った
 そのとき僕は この世から消えたいと初めて思った


■ 134 ■ 十字路 ■

 石がひとつ 叫んでいた
 時間だけの ラビリンス
 走り後から 落ちてった

 奏でた衝動 沈んだ涙へ
 鳥居の終点 祈るために
 塞いだ慟哭 膝の快楽地
 ゆれて謡い 溺れていた


 あなたが居ないとあなたを捜して
 あなたとわめき狂っていた
 あなたを憎んであなたをころして
 あなたと愛しあいたかった

 時間だけの ラビリンス

 走り後から 落ちてった

 あなたに突きつけあなたに口づけ
 あなたと二人世界の果てで
 あなたのココロもあなたの身体も
 あなたの全テウシナッテク


 カタチ辿る 瓦礫の紙魚
 かなり暗く 眠っていた

 水の土 指の色 何も言わず 笑っていた

 神の雪 雁の声 冷えた街 飛び立てない


■ 135 ■

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 ふらふらと
 いつになく酔いつぶれて
 外で
 吐き出したチョコレイトの


 トロついた上に舞い散ってる
 その雪虫のささやきのなかへ


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■ 136 ■

 のっぺりとした もち肌に
 黄色いTシャツ ジーンズ系のスカート
 ひらり
 飛び降りる 音もなく
 枯葉のじゅうたんのうえに

 赤い手袋と こげ茶のコート
 きめ細かい すじのとおった顔立ち
 ひらり
 風にまう 音もなく
 天高く 空のカナタに向こう

 ひらり
 ゆれ散る 音もなく
 着地の土の居心地は上々


■ 137 ■

 せめて苦しみが一瞬もなかったことを祈って
 わたしはあなたの亡骸を抱いて
 曇り空の向こうから降った雪は
 もう その肌に触れても解けてゆかないのね


■ 138 ■

 星は白夜の森に眠る

 ざらく
 ざらくと
 さんざめく

 うるさい白夜に月眠る

 カステラのような
 あたたかさ

 ぬくだまる森の
 この静けきを
 かしこみ
 かしこみ
 野鳥や歩く

 何森(いずもり)つきぬは白夜の風よ

 ざらくや
 ざらく
 すさびはむ


■ 139 ■

 雪は 死んだ

 水は 溶けた


 枝に緑の黴が 生えて

 また春が やってきた


 死んだ季節に
 私は生まれた


■ 140 ■

 おまえら全員傘捨てろ。


 雪なのになにやってんだ、邪道が。


 オマエラ全員上を見ろ。


 雪なのに、なにやってんだ。




 下衆が。




--Presentation by ko-ka--