■ 21 ■
しつらえた夢遊病に
なんども咲いたのは 誰
遅くとも紫外線に
だだをこねられた午后は
ボツリ
と
首をたれて 願うのが 良い
ガス室の奥で緩慢に
うごめいている様を 見た
論点を隠し続けている
貴女を指差しながら
死んだのは 誰
しつらえた夢遊病に
なんども咲いたのは 誰
遅くとも紫外線に
だだをこねられた午后は
ボツリ
と
首をたれて 願うのが 良い
ガス室の奥で緩慢に
うごめいている様を 見た
論点を隠し続けている
貴女を指差しながら
死んだのは 誰
わたし 一言も喋ってないわ
あなた 一体誰と話しているの?
わたしはあなたが好きなのに
あなたはわたしが嫌いみたい
あなたはわたしと会話して
わたしはあなたを嫌いと言うの
わたしはあなたを見ているだけで
あなたはわたしを嫌いと言うの
わたしはわたしじゃないみたい
あなたのわたしはわたしじゃないのに
わたしはあなたを見てるだけ
わたし 一言も喋ってないわ
あなた 一体誰と話しているの
どれほど 濡らして
ここにコップがひとつ置かれている
コップのなかに水が こぼれ落ちそうなほど
誰かが 誰の 指だ?
幽霊が通り過ぎる しかいのはしに 黒猫が通り過ぎる
ふきつな 声がして
コップのなかみはきみだ君が あふれだそうとしている さあ誰があふれさせようとしている?あの指は 誰だ?誰のゆびだ? 何人ものゆびだ全てが共犯者であり全てが 君をはじきだそうとしている きみをおいつめようとしている精一杯抵抗してなすすべもなくなってからゆっくりと 君が とけて あふれる全てが君だ君がなくなっていく 本当はどれもこれも君だったあのコップのなかみもコップさえもそこの机もあのエアコンも 君は見透かされている さあ誰に見透かされている?あの目は 誰だ?だれの目だ? 何人もの目だ全てが共犯者であり全てが 君を陥れようとしている きみをあざわらっている精一杯抵抗してなすすべもなくなってからゆっくりと
とけて
あふれ
す べて
きみ だ
ぬ れ て
ぜ ん ぶ
あ ふ れ る すべて が
= (イコール)
首をふる
クスリを飲んで
そういえばこの間20mgにしてもらった
声が遠く消える
頭をふる
ここにコップがひとつ置かれている
コップのなかに水は いくつかの水滴は
あれ? だ あれ? とは?
黄色いブタが通り過ぎる しかいのおくの エアコンがゆがみ装置が
ふきつな 叫びが!
これは爆破装置である! 私を殺しに来たのだ、私がなにをしたというのだこの世の不条理はついに私を殺しに来たのだ! 誰だ、誰の仕業だ、私以外の 皆 の せ い に ち が い な い 共犯者! 共犯者! そしてこいつは盗聴器でもある、私の思考が全てに漏れる、私以外の皆のもとに、そしてあざわらうのだ! 私がなにをしたというのだこの世の不条理はついに私を笑いに来たのだ! 誰だ、誰の仕業だ、私以外の 皆 の せ い に ち が い な い 共犯者! 共犯者! 世界は危険に満ち溢れている家から出なくとも危険はなくならず、あと数分か? いや、爆破などはしない爆破するかも知れないと恐怖している私をあざ笑っているのだ私が
なにを
したと
いう の
だ そんざ い
して い る こと
さえ
= (イコール)
首をふる
眠気が鈍く
やってくるようやく 安心もできない夜を
眠気が強く
頭をふる
医者が
まぶたの裏に
医者が
カルテを書きながら
決まってこう言うのだ
「……私には見えませんが……クスリ、もう少し増やしましょうか」
寝る前にエアコンのリモコンを裏返し
単三電池をふたつ取る
こうしておけばもはや
起爆装置は作動しない
はずだ
おそら く
ぼくがうすくなって
ぼくがうずくまって
ぼくがうずまくって
ぼくがまずくうって
僕が薄くなって
僕が希薄になればもしかしたら世界は均一になるのかもしれない
という妄想
僕が蹲って
足首に切り傷をつけはじめる縦につけはじめる縦に切ろうとしている
縦に切ろうとしている
僕が渦巻くって
恐ろしい夢恐ろしい白昼夢恐ろしい世界になってしまうだろう
全員が僕
僕がまず喰うって
咀嚼して飲み込んでキモチワルクかきまわして消化してかためて
排泄する摂理
ぼくがうずくまって
くってまいてうすくなる
ぼくがきんいつになる
し だ
静かな沈黙だった
そんな目で 見つめられる
困ったような笑顔を作った
そんな目で 見つめかえすと
トリカゴの造鳥はもう
ネジ切れている
朝は フィクションの中で悩み
夜は 皮がはがれるのを怖がって
午前四時半に醒めたりする 病室 を想像する
エーカーゲーなど
設置せずとも
どちらにも
動きはじめていて
独りきり とりのこされて
床に放り出されている文庫本を
じっと見つめている
そんな目を 向けられる
動きだしたくせに
何も含まない硝子 そんな目で
きみ ねぇ きみ
チーズを食べなよ
ベルモンテの 裏側の
甘い 甘い
大地が混乱していたとき
どこに逝っていたか知ってるんだ
ねぇ きみ
ザクロを食べなよ
心臓に似た あの赤い血を
ぺシャリ ペシャリ
僕がきみを想っていたとき
誰と寝てたか知っているんだ
ねぇ きみ ねぇ
アダムを食べなよ
彼とひとつに なりたかったんだろう?
とろり とろり
蛇の恍惚に酔いしれたとき
何をつかんでたか知っているんだ
ほら だんだん
クスクスクスクス
世界がわかりやすくなってきた
クスクスクスケリア
ウズベキスタンの
こどもたちは
繊細に
笑う
顔色をうかがった
上の影にむかって
考えている
自分という方法
うつりと
おみなえ
あるは
弾丸
を
望んだある日
りはと
ロルステンカ
し は
そのとき
空のほうらいが
あつた
大量注入された脳は
ひとみをつむると
揺れる
ぐらゆ らり
あり あ
り
ら
ナイルの主流で
電波は
届いていますか?
さあ
ワタシニは見えませんがあなたは
ほうらいしてい
るのですか?
Mの指 法則は万里の頂点に掲げる
縦に 倒 す
く ずれ た 余韻
く しく も
丘の上 古を記した石像が眺める
結末は Φの素養を停止したまま
く れな い 白夜
く さり は
切り刻む
ナナ めに お ろして
軌道変え
ナナ めに な いふ を
く ずれ た 病院
く れな い 患者
く しく も 白夜
く びき を
こうしてまた
むかえる瀬の
苦しいこと
ろっ骨を掴み
十二番目が浮き
背中合わせに痛む目の
はげしいこと
移る季節
しんと落ち
無味無臭の言葉たちが
無色透明であれと願う
歩の
あれはと指した夜
あわれ
尾を引き流れる残像
遠くの灯を包むように雲は
斜形の枠を
ほのかに白く
見上げているのは誰です
息をおそれ
胸の前に置き続ける痛みが
消え去ることもなく
夜露を誘う
こうしてまた
明ける先の
苦しいこと
「その後の様子はどうかしら」
「はい、体力回復の経過は順調です」
「そう……。脳波はどう?」
「問題ないです」
「本当に?」
「えぇ」
「じゃぁなぜ……思い出せないのでしょう」
「私には解りかねます」
「何が?」
「貴方が。どうしてそんなに拘るのか」
「私も解らない」
「何を?」
「どうして私が拘るのか」
「――なら、賭けをしませんか」
「賭け?」
「貴方がもし、彼を見捨てたならば」
「私と一夜を過ごしましょう」
「無理ね」
「え?」
「私にとって、彼はかけがえのない」
「実験動物」
「違うわ。大切な人だから」
「そうですか」
「ねぇ」
「はい」
「その後の様子はどうかしら」