■ 雨 ■


■ 71 ■

 空面冬倒きす ぎとる
 感知する雨か かあさん なぜ奴隷らら歌う

 そうよ?
 つまり
 うた よ?

 意思なんてないね

 散 らばる空洞 背丈 曲がる猫
 飛び出す魚も きす ぎとる冬


 叩きますね 布団を 銃声と 間違うように


 面白くないのでせめて
 什星としてみる 配置 書架から漏れ出した

 つぶを
 よっつ

 その名を 雨 と名付けよう


■ 72 ■

 雨はあんまり好きじゃない。

 傘を差すと壊れるから

 土砂降りの中で

 閉じた傘を持ったまま雨に打たれてた。


■ 73 ■

 雨が降っていると余計な事を思い出す。

 たとえば
 小学生だったとき、写真を撮ったこと。

 窓辺に
 僕は座っていて
 窓の外に
 傘をさした祖母が立っている。

 僕はカメラに向かって
 祖母は僕に向かって

 視線をなげかけている恐ろしい風景。

 雨が降っている。

 愛されたくて
 でも
 証拠は残されたくない。


■ 74 ■



■ 75 ■

 雨季が
 恥ずかしげもなく停滞した後の水門です
 (泥の鉄砲です)

 つったた つたた たたんつつ つたっら
 踊る円形透明の 爪先 爪先
 ったっら たっら

 さかしくかかった 声です


 木造校舎にピシャリとあてて
 校庭の草にお辞儀をさせたの誰ですか
 つったた つたた
 つったた たたん


 牛舎の

 丘を越えますね


■ 76 ■

 モアモアモア

  モアモアモア……


 たちこめる闇の狭間
 置かれた箱の 底の底から

 カタカタカタ

   カタカタカタ……

 光の水がコトントコポン

 湖面となった世界に
 魚が一匹 優雅に泳ぐ

 スイスイスイ

   スイスイスウ……

  ポトン

   ・

 雨だ 雨だ 雨がくる


   ・
   ・

 水の向こう側
 喜んだのは


■ 77 ■



■ 78 ■



■ 79 ■



■ 80 ■

 卵とおぼしきものどもが
 青い
 底へと
 沈んでゆくのです

 Ka-p Ke-p Ka
  Ka-p Ke-p Ka

 舷灯機に射たれ
 キヒろの瞳をウツロにただ酔わせる

 Ka-p Ke-p Ka
  Ka-p Ke-p Ka

 城を
 見ましたか

 あぁ
 あれは良ひ意匠でしたな
 あの
 あめのレリイフ

 卵のようなものどもが
 射たれ
 朽ちたように青く
 また
 その瞳は
 ウツロな思想を挺して漕ぐある一つの曲

 Ka-p Ke-p Ka
  Ka-p Ke-p Ka

 Ka-p Ke-p Ka
  Ka-p Ke-p Ka

 水を光にとおして
  ――十も束ねれば良ひ方――
 底に沈む
 青い影をまとい

 はじける時を
 待っておるのです



--Presentation by ko-ka--