■ 囹圄の会話 ■

「ただいま。………」
「おかえり。……大丈夫? 顔、青いよ」
「………」
「外の世界は、どう? 慣れた?」
「……怖い。……っ怖かった…!」
「――!」
「……っ…ぅ……」
「泣かないで、こっちに来て座って」
「……ん。……っ、………」
「うん……、怖いよね。そうだと思った。僕と君は同じだから、……そう、わかるよ。怖いよね」
「ご、め……っ」
「大丈夫。待つよ」
「………」
「………」
「……っの、うまく言えないけど、あの「広がっている感じ」とか……」
「うん、」
「もし……っ、もしかしたら。「アイツ」に見つかるかも……知れない…とか……」
「うん、」
「死にたくなる」
「うん、」
「こんなに死にたいなら逃げなきゃよかった。なんで私逃げたんだろ……あの時…、死にたくないって……思ったのに、なんで、こんな、苦しいのかな。おかしいよ。なんでなのかな…」
「………」
「ごめん。弱音吐いた」
「いいよ。ここには、僕と君しかいないんだから」
「………」
「ねぇ、ひしな。これは本当のことだけれど、僕は君で、君は僕なんだ。奥のところで繋がっている。だから、君の心が痛むと、僕も痛いよ……心が、とても、…痛むよ……」
「……森くん…」
「………」
「泣いてるの……?」
「僕も……ね、逃げ出しちゃったんだ…っ、僕だけじゃなくて、……僕の家族、全員が、目をそむけて逃げ出した……、……っ…」
「………。……ねぇ、」
「なに?」
「お互いに言おうよ。逃げていいんだ、って……」
「………」
「………」
「ひしな。逃げてもいいんだよ……、この家はおかしい。それと「アイツ」から逃げ切るには、外国の辺境にでも行くしかないよね。飛行機手配してあげる」
「森君、……逃げてもいいんだよ。大丈夫、きっと上手くいく。「アイツ」に見つからないで、無事に卒業して一緒に外国に行こう。手術するんだ。絶対に治る」
「……ありがとう。…そろそろ行って。おやすみ、ひしな……」
「おやすみ。……森君」