■ NO ■

 だって、ミルクと一緒にすれば、少しは余裕できるかなと思ったんです。
 チョコレイト、セクシーじゃないですか。
 僕は、セクシーなものはきらう傾向にありますが、チョコレイトだけは許します。
 なぜって、文字は食べれないけれど、チョコは食べられるからです。
 話がズレました。
 誰にも救ってもらえない、なんて、叫ぶ必要はありません。
 コーヒー、十分じゃないですか。
 僕は、不確かな約束ごとをきらう傾向にありますが、コーヒーだけは確かなものとしてそこにありますでしょう。
 飲めばホッとできる毒薬です。酒とコーヒーと煙草。大人は、よほど毒がおすきなんですね。
 さあ一口。
 え、要らない?
 あぁ。
 そうですか、彼女を……。
 その床にころがっているモノは、気になさらなくて結構です。
 アーモンド、あれウソって知ってます?
 本当に誰が言い始めたのか、あの薬がアーモンド臭だなんて。マカダミアナッツに失礼ではないですか。
 僕はマカダミアナッツよりもピスタチオの方がすきですよ。なぜって、手でカラを割れるからです。
 あの工程は外せませんね、同じ理由でカラ付きの落花生なんかも良いです。
 話がズレました。
 誰も救えない、なんて、叫ぶ必要はありません。え?
 また?
 また、何です?
 マタコロシテ、オマエハナンド?
 もちろん何度でも。
 知ってます?
 大抵の女の子はこういった、イングリッシュガーデンが見える白い木の室内で、ピンクのキャビネットに置かれた宝石箱をながめながら、レースのかかった丸いテーブルにカフェモカとケーキをのせて、淡い恋のはなしをするのに憧れているんですよ。
 ひとつ。
 言い訳をするなら、ミルクと一緒にすれば、少しは余裕できるかなと思ったんです。
 タイミング、だめでしたね。
 僕は、床掃除が苦手な傾向にありますから、もちろんソレ、お持ち帰りいただいて結構ですよ。
 そうそう、今度また別の誰かをすきになるなら、その前に煙草くらいは、やめといてほしいものですね。
 ケムいですよ。
 もう服にしみついちゃってるじゃないですか。
 え?
 あぁ、もちろん。
 当然です、僕はあなたを救っているだなんて……。
 夢にも思ってないですよ。